近年、病気になる前に予防をする「未病」が注目を集めています。環境、生活習慣、加齢などが原因で心や体のストレスが蓄積することによって自己治癒力が低下し、生活習慣病や癌などの疾患を発症しやすくなります。一般の医療では疾患を発症してからケアしますが、統合医療では疾患を発症する前の段階からケアすることを重視します。2016年10月21日(金)に健康保険組合連合会において、関由佳氏(小西統合医療内科/内科医・予防医学、栄養療法)が、「腸内環境とデトックス―有害ミネラルについて―」と題して講演しました。
自己治癒力は、「自律神経」「ホルモン」「免疫」の3つの機能で構成されていますが、これらの機能が低下すると、慢性疲労をきたす疾患に罹りやすくなります。近年、ストレス、生活習慣や食生活などから副腎疲労に罹っている人が増えていると関氏は指摘します。朝起きるのがつらい、疲れが取れない、慢性的な倦怠感、精神的に不安定になる等の症状がみられる場合、副腎疲労の可能性があります。これは、肝臓や腸の炎症、精神的なストレスによる腸内環境の悪化、睡眠不足などの生活習慣、糖質の過剰摂取などによって副腎の機能が低下するというものです。また、近年は排気ガスやたばこなどの環境汚染物質や農作物の残留農薬に含まれる化学物質・重金属などの有害ミネラルが体内に蓄積することも副腎疲労の一因となっていると考えられます。
それでは、副腎皮質を防ぐ、もしくは改善するためにはどのようにすればよいのでしょうか。そのためには腸内細菌が健康の「鍵」であると関氏は述べています。腸内フローラは日々入れ替わっており、腸内環境を改善することによって、体内環境も改善します。腸内環境を改善するためには、体内に蓄積した有害ミネラルをデトックスし、必須栄養を補充して副腎機能をサポートすることが大切です。腸内環境の改善のためには、以下の「4のR」が大切です。①Remove(除去):たばこなどの環境汚染物質を避け、野菜などもなるべく農薬の使用量の少ないものを選ぶことによって消化管の環境に悪影響を与える原因物質を除去しましょう ②Replace(補填):よく噛むなどによって消化酵素の分泌を促進しましょう ③Reinoculate(植菌):腸内細菌叢のバランスを整えるために乳酸菌、発酵食品などのプロバイオティクスなどを摂取しましょう ④Regenerate(再生):腸管粘膜を修復と再生するためにプロバイオティクスの餌となる食物繊維やオリゴ糖、ビタミンAなどを摂取しましょう。
健康を維持するためには、まず病気になる前に予防するセルフメディケーションが大切です。自分の体内状況を知り、自分にとって害になるものを摂取しないように心がけて腸内環境を整え、薬を必要としない体を作ることが第1歩であると言えるでしょう。