近年、乳がんの罹患率は急増しており、女性がかかりやすいがんの1位を占めています。現在日本では、生涯で乳がんにかかる女性は12人に1人と言われ、中でも40代~50代が最も発症しやすい年齢となっています。それでは、乳がんのリスクファクターはどのようなものなのでしょうか、また予防のためにはどのような方法が考えられるのでしょうか。
2016年8月25日(木)に「乳がんを知ろう~予防と検診~」と題して内科医の斎藤奈津子氏(聖路加国際病院付属クリニック・予防医療センター)が講演しました。斎藤氏は講演の中で、エストロゲンにさらされている期間が長い(初潮年齢が11歳以下、もしくは閉経年齢が55歳以上)ことが、乳がんの原因の1つであると指摘しました。また、乳がんの増加には食生活の変化も関係していると言われ、飲酒や脂肪の摂取量が多いとリスクが高くなります。
乳がんの予防には、適度なイソフラボンの摂取が効果的です。ただし、サプリメントなどを利用した場合は、過剰摂取について注意が必要です。豆腐、納豆、みそなどの大豆製品を毎日の食生活の中に取り込むように心がけることが大切でしょう。また、毎日30分~40分の運動も、乳がんの予防に効果的であることが明らかにされています。過度なアルコール摂取を控え、体重を管理して肥満を予防し、身体活動量を増やすことを心がけましょう。
しかし、一方で生活習慣の改善によって乳がんを100%予防することは不可能であるとも斎藤氏は述べています。乳がんは早期発見で治癒率が95%と言われ、主に小葉や乳管に発生しますが、他の組織や臓器へ転移する前であれば治る可能性が高く、そのためにも検診が重要です。乳がん検診の受診率は欧米では70-80%であるのに対し、日本では28%(2013年)と非常に低いのが現状です。月1回の自己触診を習慣化し、40歳からは年1回の乳がん検診を受診するようにしましょう。マンモグラフィと超音波を毎年交互に受診すると、より発見しやすいと言われています。月1回の自己触診は、閉経前であれば月経開始から7-10日後、閉経後は忘れないように毎月決められた日に行うと良いでしょう。異常に気付いたら、必ず専門医を受診することが大切です。
健康的な生活習慣を心がけ、定期的な自己触診と検診で乳がんを予防しましょう。