日本は、今後10年で65歳以上の高齢者が3人に1人の割合になるといわれます。がんや脳血管疾患の発症者の増加が心配されていますが、活き活きと年を重ねるために必要なことは何か。百歳現役のための健康管理についてご紹介いたします。
この3年ほど健康寿命が若干の伸び
前回に続き、2016年1月26日・27日、東京ビッグサイトで開催された「統合医療展 2016」セミナーでの松岡 留美子氏(若松河田クリニック 院長)による講演「自分の健康は自分で守り、百歳現役をめざすために」から、超高齢化時代の健康管理についてご紹介いたします。松岡氏は約10年前にがんを患い車椅子での生活を余儀なくされましたが、現在も現役で多くの患者さんの治療にあたっています。クリニックでは約1万件の症例をデータベースにした独自の健康診断(スクリーニング)を行っています。個人の健康管理で欠かせないのが、やはり健康診断です。健康で長寿でいるためには、まず自分自身をよく知る必要があります。
近年、「健康寿命の延伸」がよくいわれるようになりました。「健康寿命」はWHO(世界保健機構)が打ち出した概念で、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。健康なまま年齢を重ねたいと多くの人々が願いますが、そのためには、健康寿命と平均寿命の差(介護を必要とする期間)をできるだけ縮める必要があります。日本では、この3年ほど健康寿命が若干伸びています。しかし、それでも女性で約12年、男性で約9年の差があり、人生の最後に介護が必要な人がほとんどという状況です。
病気の発症に3つの要因
がんも含め、病気の発症要因には、遺伝要因、外部要因(ピロリ菌や肝炎ウイルスなど)、増悪因子(生活習慣などの環境要因)の3つがあります。今は遺伝子解析で遺伝要因のリスク値を測定することもできますが、実際は外部要因や増悪因子の方ががんや病気を引き起こすリスクが高いと松岡氏は指摘します。現在、外部要因も検査で比較的簡単に見つけられます。見つかれば、がんなども発症する前の未病の状態で予防することも可能です。
増悪因子については、例えば喫煙があります。喫煙はがんや病気のリスクを高めますが、実はこれは個人差が大きく、なかには生涯喫煙していても健康に影響が出ない場合もあります。長期間のヘビースモーカーであるにも関わらず、回りに副流煙をまき散らしているだけで、本人は有害物質をほとんど吸い込んではいない(そういう体質)というケースもあります。その一方で、喫煙者ではないのに生活環境が劣悪で体内に有害重金属を溜めている人もいます。
また野菜がいい、◯◯油がいい、運動が良い、といっても本人の体質に合っていなければ、まったく効果が得られないか、あるいは逆効果になることもあります。このようなことは腸内環境、さらに免疫と深く関わっており、自分自身を知るためにもやはり健診は大切であると松岡氏は述べています。
がん歴のある人は善玉菌が少ない
松岡氏のスクリーニング検査では腸内フローラの解析も行いますが、太りやすい体質の人、痩せやすい体質の人、うつ傾向にある人、などは特有の腸内環境であるといいます。腸内フローラの研究は始まったばかりで、最善の状態や平均値というものは存在しません。しかし、がん歴のある人、肥満の人、免疫疾患のある人は善玉菌が少ないという共通点があるそうです。がんになっても元気な人や再発しない人は、腸内環境が整っているか、体温が高い傾向にあるということです。腸内環境は免疫とも密接に関連しますが、免疫力を高めるために必要なのは、腸内環境を整える食事、温熱療法(体を冷やさない)や住環境の見直し(アレルギー対策、シックハウスなど)です。ハイレベルの健診で「自分自身」を知り、自分に合った免疫力アップを行う必要があると松岡氏は指摘します。