健康豆知識

健康の温故知新

掲載60 アンチエイジングでQOLを高める

高齢化時代の到来とともにアンチエイジングへの関心が高まっています。加齢に伴い、気になるのがQOL(生活の質)の低下です。今回は、視力の低下や肥満などQOLの低下を招く要因についてご紹介いたします。

日本の医療費、50兆円を突破しそうな勢い 

アンチエイジング(抗老化)という言葉はすでに多くの人々に認識されるようになっています。「長生きをしたい」と願い、アンチエイジングを心がけることがQOLを高めることに繋がることは、さまざまなデータからも明らかになっています。しかし一方で、その具体策は未だ手探り状態にあるようです。

2014年12月3日(水)、慶応義塾大学で、第6回慶応義塾生命科学シンポジウム「食と医科学フォーラム」が開催され、食品によるアンチエイジング効果などが発表されました。この中で、慶応義塾大学医学部眼科学教室教授の坪田 一男氏が「アンチエイジングのアップデート2014」と題して講演しました。日本の医療費はもうすぐ50兆円を突破しそうな勢いです。医療費の抑制のために、私たちは日頃から予防意識を高め、健康に気を配る必要があります。しかし、予防医療の重要性は広く認識されるようになってきているものの、まだ十分とは言えないと坪田氏はいいます。

臓器や遺伝子に働きかける成分を研究する時代に 

アンチエイジングを心がけることは、QOLを高めることや病気予防に繋がります。逆もまた然りで、QOLが低下すると、老化の促進や病気を呼び込むことにもなりかねません。加齢に伴い、QOLの低下を招くものの一つに視力があります。坪田氏の専門領域であるドライアイは、現在日本で2,200万人の患者がいると言われています。視覚領域の改善には食品に含まれる抗酸化成分が有用で、それらの食品によるアンチエイジング効果についての研究が近年急速に進んでいます。さらに、抗酸化作用の高い食品は何かということだけでなく、直接対象臓器や遺伝子に働きかける成分は何かという研究も進められています。医療費抑制のためにも、個々人がそうした食品やサプリメントの機能性をよく理解し、アンチエイジングに活かすことが求められているのではないでしょうか。

肥満もQOLの低下を招く大きな要因に 

また、QOLの低下を招くものの一つに肥満があります。肥満はメタボリックシンドロームや糖尿病などの生活習慣病に関係します。肥満はすべての先進国において深刻な問題で、アメリカでは年間約40万人が肥満で死亡しているといわれます。

肥満によるQOLの低下について、四谷メディカルキューブ 減量外科センター長の笠間 和典氏が「バリアックサージュリー(胃の切除による肥満改善のサイエンス)」と題して講演しました。欧米では肥満の外科手術が非常にポピュラーになっています。これまで肥満治療というと、食事や運動指導、入院、投薬などが主流でしたが、そうした内科治療で減量が成功しても、多くの場合数年後にリバウンドするというデメリットがあまり知られていない、と笠間氏は指摘しています。肥満の内科治療や、極端な食事制限などの自己流ダイエットで減量すると、体内でグレリンという食欲増進ホルモンが増えます。そのため、食欲が増え、リバウンドするだけでなく糖尿病になるケースが多く見られます。

外科手術では、リバウンドがみられない 

しかし、外科手術で胃を小さくすると、グレリンの分泌量が減るだけでなく嗜好も自然に変化し、ほとんどの患者は高脂肪食が苦手になり、低脂肪食を好むようになります。スウェーデンでも肥満の手術が人気で、約4,000名の術後20年の経過観察をみてもほとんどリバウンドしていないことが報告されています。

ただ、そうは言っても肥満を抑制するためにわざわざ胃を切除するというのも、何かリスクを伴わないか、と少しばかり不安ですが、肥満の外科手術はリバウンドのない減量方法として世界的にも注目を集めており、アメリカでは年間20万件以上の手術が行われているそうです。日本でもこの取組みが導入されるようになり、非常に注目されています。

TOP