ガンなどの難病に対処するひとつの治療法として、生きがい療法があります。
言葉自体からある程度見当がつきますが、これは気持を前向きにして、いわゆるプラス思考で生きがいを持って生活するという、患者本人の心のプログラムといえます。
難病に罹ると、不安になったり、ストレスがたまったり、さらにこれらが高じると死の恐怖に苛まれたりするものですが、こういう状態を続ければ、決していい結果にはなりません。
イメージ療法のひとつとも心理療法ともいわれるこの療法、伊丹仁朗博士が、サイコオンコロジー(精神腫瘍学)と「あるがまま」で知られる森田療法をもとにして開発したもので、博士は「生きがい療法実践会」を中心に学集会を定期的に開くなど、幅広くこの療法(心理学習プログラム)を実践しています。ガンを生き抜くという命題のもと、ガン患者のモンブラン登山や富士山登山を実行し大きな成果をあげていることは、すでにテレビでも放映されよく知られています。
このコーナーでは、笑いの療法や音楽療法などについてもとりあげてきましたが、こうした療法が免疫力を高めることがすでに実証されていることは、ご存知のとおりです。伊丹博士も、従来より心理的なものが肉体にどう影響するか、さまざまな実験を試み、笑いと免疫についても興味深い研究成果を得たといいます。
毎日、明るくユーモアあふれる生活をすることがガンの予防にも治療にも役立つ。生きがい療法の原点は、笑いにあるのかもしれません。
伊丹博士は、生きがい療法についていくつか挙げていますが、なかでも次の項目はよく理解できます。
- 心のストレスがガンを悪化させることを知る
- 心配を作る心の関心を外に向ける
- 死の不安から逃げず共存するコツを実践する
- 自分の病名を知り恐れをなくして心構えを作る
博士はまた、著書のなかで、大切にしたい基本方針として
- 自分が主治医のつもりで病気と闘っていく
- 今日一日の生きる目標にうちこむ
- 人のためになることを実践する
などの5項目を挙げています。
「病は気から」とは昔から言われる格言ですが、まさに病に罹るのも、それを治すのも「気」であるということでしょうか。ここにも、生きがい療法の存在が見え隠れします。
病気を治すのは患者本人であって、医師はサポート役である、とはよく言われる言葉ですが、生きがい療法はまさにこうした考えに立ったものであるといえましょう。「禍を転じて福となす」という諺もあります。「一病息災」という諺もあります。
もし万が一、ガンなどの難病に罹ってしまっても、それを悲観し死の恐怖におののくよりも、自分の体内にあるガン細胞を魚の大群が食べつくしているシーンでもイメージしながら、笑いを忘れずに楽しく過ごしたいものです。