健康豆知識

ホリスティック(全体医療)

掲載26 森林浴療法

フィトンチッド(fitontsid)という言葉をよく耳にします。これは、ロシア語で、「フィトン」は植物、「チッド」は殺すという意味ですが、あわせると「植物から発散されて、周囲の微生物を殺す物質」となります。これを、芳香物質と呼ぶ学者もいます。

森林の中でもとくに針葉樹に多く含まれるフィトンチッドですが、この物質を突き止め、命名したロシアの生態学者B.P.トーキン博士は、「人間に生気をもたらす物質」と定義しています。

フィトンチッド効果で人気が高まっているのが、森林浴療法で、ストレスを減らし、臓器の活動を高めたり生理機能を促進する働きのほか、予防療法としての効果にも注目が集まっています。

「森林浴」については、その起源は新しく、この言葉そのものは林野庁(農林水産省)が1982年につくったもので、「森の中で長時間過ごして、森林パワーをもらい、心身共に元気になる健康法」という意味になります。

森林浴によるフィトンチッドの効果については、古くからロシアやヨーロッパ諸国などで研究が行われ、人間の心身に与える多くの好影響が明らかになっています。日本においても、この種の研究は盛んになってきており、すでにたくさんの成果が発表されています。

林野庁でも、森林浴を健康づくりに活用しようと、森林総合研究所が日本医科大学に委託して、成人を対象としたいくつかの研究を続けていますが、たとえば次のような実証効果を公開しています。

 

  • 森林浴2日目で、がん細胞を破壊するナチュラル・キラー(NK)細胞のNK活性が26.5%向上。3日目には52.6%向上。さらに、血中のNK細胞の数や、NK細胞画出す抗がんたんぱく質も増加した。
  • 副交感神経の働きや、脈拍・血圧について、都会にいるときに比べて改善されたものがあり、リラックス効果が認められた。
  • ストレスホルモンであるコルチゾールが50%減少し、逆にストレス解消ホルモンであるアセチルコリンが20%増加した。

森の中では、フィトンチッドやマイナスイオンによって空気がきれいですから、心肺機能の改善や活性化に良い結果をもたらしますし、歩くことによって狭心症や心筋梗塞の予防にもつながります。樹木が発散する成分の中に人の免疫力を強化するものがあり、森林浴をすれば風邪をひかなくなるともいわれます。

また、美しい緑の風景を見、鳥や虫の声、風や川の音を聞くことで、視聴覚が刺激されます。木の実を味わい、花や草の香りを嗅ぐことも機能の回復に役立ちます。近ごろは、ボケや痴呆の予防としても、森林浴が注目されています。

林野庁では、平成18年4月に、全国から森林浴に適した森10カ所を「癒しの森」として認定しました。(長野県に5カ所、岩手県、山形県、山口県、高知県、宮崎県に各1カ所。)同庁としては、こうした森をさらに増やしていく方針だといいます。

山国の日本では、森林浴療法は、老若男女誰にとってもたいへん手っ取り早くでき、また気持のいい、効果の期待できる健康法といえましょう。

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