健康豆知識

ホリスティック(全体医療)

掲載14 鍼灸

伝統医には、アジアに起源を発するものが数多くあります。インド医学では、アーユルヴェーダやヨーガが代表的なものですが、中国医学には漢方、気功、そして鍼灸があります。

東洋医学は、人間を大宇宙という自然界でいきている小宇宙であると考えます。そして、小宇宙の中を気と血が流れることによって人間は生きており、この二つの宇宙、気と地のバランスが崩れたときに病気になる、と考えます。鍼灸は、このバランスを整える医術のことです。

鍼灸の治療の根本は、経絡と経穴(ツボ)です。経穴は、体表上にあって治療効果のあるポイントで、代表的なものは全身に365あります。これらの経穴は、気血の流れによって14のルートに分かれており、これが経絡といわれるものです。

鍼灸は、生命エネルギー(気)の出入り口ともいわれる経穴に金属の細い針を刺すことによって機械的な刺激を与え、あるいは艾(もぐさ)を燃焼させたりすることによって温熱的刺激を与えることで病気を予防したり症状を軽減するもので、いまでは日本の伝統医療の一つともいわれています。

この予防というのが鍼灸の特徴で、2000年以上も前に中国で書かれた医書「黄帝内経」には、「未病を治するは名医なり」と、すでに予防に重きを置いていたことがわかります。
鍼灸の効果については、世界保健機構(WHO)やアメリカ国立衛生研究所(NIH)などで科学的に証明されています。

鍼灸医学は、6世紀に漢方薬よりも早く日本に伝わったといわれますが、それ以来明治時代の初期までは漢方薬とともに医学の主流としての地位を歩んできたのですが、西洋医学(オランダ医学)が伝来した幕末以降は衰退の一途をたどり、さらにその後、明治政府の欧米化政策によって、1874年には西洋医学をわが国の医学とする立法が制定されて、医学の主流の座を西洋医学に明け渡すことになってしまったのです。

これは、内因性の病気には東洋医学の効果が評価されたのですが、戦場などで受けた外因性のもの(外傷)に対しては西洋医学よりも治療効果が遅いといった現実から、軽視されるようになったからです。

それがいまになって、ホリスティック医療への期待や関心の高まりによって鍼灸が再び脚光を浴びるようになってきましたし、国内外の公的な研究所や大学などでの実験・研究の結果その効果が証明されていますので、まさに歴史は繰り返すといったところでしょうか。

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