健康豆知識

ホリスティック(全体医療)

掲載12 漢方医学

CAM(Complementary and Alternative Medicine)と呼ばれる相補・代替療法を広義に解釈すると、インドや中国などに古くから伝わる伝統医療も含まれます。
アーユルヴェーダやヨーガ、気功、鍼灸などと並び称されるのが、漢方医学です。
その起源は紀元前にまで遡るといわれますが、日本には朝鮮半島経由で、あるいは遣隋使や遣唐使によって中国から伝えられ、現存するわが国最古の医書「医心方」に紹介されているといわれます。

体のコンディションや体質などに合わせて配合した生薬(動植物など自然界の物質からつくった薬)を配合した「漢方薬」を服用するのがこの医学の特徴で、西洋医学のように病名を特定してそれにあわせた一律の対応をするのではありません。西洋医学でいう同じ病名でも、個々人に合わせて生薬を配合する、オーダーメイド的な療法です。

西洋医学が患者の徴候から疾患を特定(診断)してそれにあわせた治療を施すのに対して、漢方医学では治療法を決めるために、医師は「四診」を行います。
まず、肉眼による顔色や舌の状態等の観察=望診。続いて、聴覚・嗅覚による観察=聞診。さらに、西洋医学と同様の問診。そして、脈診、腹診など、直接触れる観察=切診、の4つです。

こうした経過を経てつかんだ患者の症状を「証」と呼び、治療法を決めるもとになるわけです。また、診察法や処方などについて、四診のほかにも西洋医学とは違った考え方が数多く受け継がれていますし、具体的な処方については、漢方薬だけでなく、鍼灸や薬膳、気功などとも相通ずるところがあります。

生活や食事の変化によって増えてきた高血圧や糖尿病などの疾病には、むしろ漢方医学の方がベターであるといった考えが多くなっていますし、高齢者に対しては、有効性の高いのは漢方であるといわれます。

もともと漢方医学が得意としているのは、自律神経失調症や胃炎、肝炎、インフルエンザ、気管支喘息、更年期障害、冷え性などですが、最近は、生活習慣病の増加・若年化やアレルギー疾患の疾病構造の変化などによっても、漢方医療の重要性は高くなっていますし、また、QOLの改善や健康維持といった観点からも、漢方医療が求められています。

とはいっても、西洋医学を否定するわけではなく、要は、西洋医学と漢方医学を上手に組み合わせることがこれからの医療といえるのではないでしょうか。

漢方薬に健康保険が適用されるようになったことや、薬品の副作用が問題になることが起きたりしていることも、漢方医学に人気が集まる理由になっていますが、国内外の医療関係者の間でも評価されるようになっています。現に、わが国の医師の70%が漢方薬を使用した、という調査結果もあります。

また、漢方医学の伝統を守りつつ、普及・啓蒙と発展を目的として、財団法人日本漢方医学研究所といった専門の機関も設立されています。ここでは、漢方薬の効果について科学的な研究をし、高い評価を得ています。

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