健康豆知識

ホリスティック(全体医療)

掲載10 物語療法

精神の疾患に対する治療法として芸術療法がありますが、そのひとつに、物語療法があります。
童話療法とも演劇療法ともいわれているものですが、これはよく知られた童話や民話などを読んで聞かせたり、あるいは患者自身に自らが主人公のストーリーを作らせたりすることによって、心の状態を認識させ、解決策を自覚させて精神状態を回復させるという、カウンセリングによる技法です。

童話や民話といえば話が単純明快で子供じみていますが、そこが大事なところで、実は内容が現実的であったり非現実的であったり、また神秘や不思議に満ち満ちていたりといった物語に接することによって物語が自分の現在の境遇や歩んできた人生に似ていることを知り、患者は現在の状況を理解するようになるわけです。

物語の主人公に患者が自分自身をオーバーラップさせたり、ストーリーを自分の生き方に置き換えたり、あるいは登場人物たちの言動が自分の苦しみを表わしていることに気づいたりすることによって、自分が抱えている問題に立ち向かい、これが解決に向かう手立てになったりするわけです。

いじめられたり苦しめられたりして最後に幸せをつかむ主人公や、勧善懲悪の世界や、反面教師的な教訓などといった展開は非常に感覚的・情緒的で、日本的といえましょう。この点からも、物語療法は日本人に向いた療法といえるかもしれません。

患者の状態や症状にもよりますが、実際のカウンセリングでよく引用されるのは、「赤ずきん」「一寸法師」「舌切り雀」「三匹のこぶた」「かぐや姫」「白雪姫」「花咲か爺さん」など、私たちが何回も見聞きしたことがあり、よく知られたごく普通の童話ばかりです。伝統的な昔話が医療の世界で貢献しているとは、不思議な気がします。

芸術療法の中には、この物語療法のほかにも、以前このコーナーで紹介した音楽療法や絵画療法をはじめ、詩・俳句療法、舞踊療法、箱庭療法、コラージュ療法、造形療法など、いろいろあります。

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