健康豆知識

健康格言から学ぶ

掲載4 酒は百薬の長

酒にまつわる諺・格言は、古今東西を問わずたくさんあります。これも、酒が生活の中で身近な存在であることと、「酔う」という作用を伴うからでしょう。諺辞典を見てみると、「酒は憂いの玉箒」「酒は詩を釣る針」などといった、酒の利点を表すものから、「酒、人を飲む」「酒は百毒の長」などといった否定的なものまで、実に多様なものがあることに気づきます。

酒は、飲まないより飲んだほうが良い?

「酒は百薬の長」とは、「適度の飲酒はどんな薬にもまさって効験がある」(三省堂/大辞林/第三版)ことを意味します。出典は古く『漢書・食貨志下』で、漢を簒奪した王莽の言葉と言われます。しかし、一方で、吉田兼好が鎌倉時代末期に「徒然草」の中で「百薬の長とはいへど、万の病は酒よりこそ起れ」と書いているように、酒の評価は二分されますが、度を過ごさず適量であれば、飲酒はそれなりの効用があると考えられます。
適量の酒には、有害なLDLコレステロールの増加を抑え、善玉のコレステロールであるHDLコレステロールを増加させ、動脈硬化の予防につながる効果があると指摘されています。この他、気分がリラックスしてストレスが発散されたり、人間関係をスムーズにするといった日常生活の潤滑油の働きをしてくれるのが「適量の酒」です。また、ポリフェノールのはたらきで心筋梗塞などの予防に役立つという情報によって、赤ワインブームに火がついたのも、記憶に新しいところです。
しかしながら、こうした効用が出るのは、あくまで適量を守ってこそ。せっかくの百薬の長も、度を越えて大量に飲み続けると、健康を害することになります。肝硬変や膵炎などを引き起こすばかりか、高血圧にもなりやすくなります。翌日に残らない程度で、自分の適量を守って楽しい酒にしたいものです。

γ―GTP

飲酒といえば、すぐ気になるのが肝臓、肝機能で、その判断材料とされるのがγ-GTPです。γ-GTPとは、肝臓や腎臓、膵臓などにある、たんぱく質を分解する酵素のひとつで、その値が飲酒量と非常に深い関係のあることは、よく知られています。この数値が基準を超えると、アルコールを控えるように医師から指示されることが多いようです。

アセトアルデヒド

アルコールは、そのほとんどが十二指腸と小腸で吸収され、肝臓に進みます。肝臓の中で分解して、アセトアルデヒドになり、さらに分解して酢酸になり、水と炭酸ガスになります。このアセトアルデヒドという物質は、二日酔いや悪酔い、吐き気、頭痛などといった症状の原因となります。飲んで顔が赤くなるのも、この物質に起因します。また、アセトアルデヒドには、発ガン性もあるといわれています。

飲酒が起因する疾病

独立行政法人国立健康・栄養研究所が行なった「飲酒と血圧上昇の関連」についての調査は、「日本人男性における日本酒換算13合程度以上の飲酒は、血圧の上昇度に強く関与する」と結論づけています。飲酒と血糖値・糖尿病との関連についても、いろいろな研究がされています。糖尿病などの疾病は、食事をはじめとする生活習慣に起因することが多く、そのため、習慣的な飲酒、度を越えた飲酒などによって適正な食事がとれなくなることが、血糖値のコントロールの乱れにつながりかねません。また、飲酒が過ぎると、中性脂肪の値を高めてしまう恐れもあります。

「適量な飲酒」はどれくらい?

それでは、「適量な飲酒」とはどれくらいの量なのでしょうか。個人差はありますが、厚生労働省が進めている「21世紀における国民健康づくり運動」(「健康日本21」)では、「節度ある適度な飲酒」として、1日平均純アルコールで約20グラムであるとし、換算の目安として表示している表によれば、ビール:中ビン1本500ml、清酒:1合(180m)、ウィスキー・ブランデー:60ml、焼酎:35度/1合(180ml)、ワイン:1杯(120ml)となっています。
ただ、「適量な飲酒」といっても、適量の基準は人によって異なります。健康診断の調査票に、一日あたりの飲酒量を記入する欄がありますが、これをもとに医師に相談して自分の適量を決めるのもいいでしょう。そして、適量を厳守するにしても、健康のために欠かせないのは休肝日。多くの医師は、週2回以上の休肝日を勧めています。
「適量」と「適切な飲み方」を守り、「百薬の長」となるように、上手にお酒を楽しみたいものです。

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