健康豆知識

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掲載21 脳幹から癒す、オルゴール療法

私たちは生命維持のために水や空気を必要とします。加えて、「音」も生命力を高めるために欠かせない要素といえます。今回は、音の響きで脳幹を刺激し、身体を芯から癒すオルゴール療法をご紹介します。

森に潜む「癒しの響き」

私たちの住む地球はさまざまな音で溢れています。音のない世界では生命をはぐくむことはできないともいわれています。

私たちが生きていくうえで最も重要な器官の一つが脳幹です。脳幹は呼吸器系、神経系、ホルモン系など諸器官の働きを司っています。「音の響き」はこの脳幹にダイレクトに影響を与えます。

例えば、森林浴の効用は、オゾンやフィトンチッド、マイナスイオン、グリーンなどによるものですが、なかでも大きいのが、「音の響き」による効果です。

森には、鳥のさえずりや木々の揺らぎ、川のせせらぎなどふだん聞き慣れないさまざまな音が満ちています。そうした超低周波や超高周波の「音の響き」は脳幹に作用し、人体に良い影響をもたらします。

オルゴールがもたらす究極の音の癒し

逆に、都会では超低周波や超高周波の音を感知することはほとんどありません。都会での暮らしは、ストレスを抱え、さまざまな疾患を招きかねません。

私たちの聴覚では捉えることのできない超低周波や超高周波の音は、脳幹を直接刺激し、心臓など内臓の働きを活発化し、全身の血流を促進させます。

森を散策することで、それらの音を体感できますが、実はもっと身近にその「音の響き」を感じられるツールがあります。それがオルゴールです。

2011年9月8日、東京都立産業貿易センター浜松町で開催された「コ・メディカル産業展2011」のセミナーで、日本オルゴール療法研究所所長の佐伯吉捷氏がオルゴール療法による心身の活性化のメカニズムを解説しました。

佐伯氏とオルゴールとの出会いは、今から20年程前。欧州旅行の際に聴いたスイスオルゴールの重厚な音色に思わず引き込まれたそうです。スイスオルゴールに魅せられた佐伯氏は、その後、「スイスオルゴール友の会」を設立し、全国各地でオルゴールコンサートを開きます。

これまでに、コンサートはすでに1万回を超え、来場者からは、「リラックスした」「気分が良くなった」という声だけでなく、病気の改善報告まで寄せられるといいます。

高周波音楽で脳が活性化

佐伯氏が、オルゴールの癒し効果により強い関心を抱くようになったのは1995年のことです。新聞でなにげなく目にした京大と旧文部省の研究チームによる「高周波音楽で脳が活発になる」という記事が一つの転機となりました。

記事の内容は、「人間の耳では聞こえない高周波と低周波の響きが、脳幹を振動させ、脳幹と視床下部の血流を促進する」というものでした。佐伯氏はオルゴールにも同じような響きがあるのではないかと、大阪大学にスイス製72弁以上のオルゴールを持ち込み調べてもらいました。

その結果、オルゴールの響きには熱帯雨林や深い森に存在する3.75ヘルツという超低周波から10万2千ヘルツという超高周波まで含まれていることが判りました。

120~130種類の病気に対し、5000件以上の回復例

オルゴールの響きが脳幹を刺激することで、自律神経の働きが正常になり、血流改善や体内の老廃物の排泄が促進されることが学会で認められつつあります。

また、オルゴールから高周波を除いた音では血流が減少すること、22キロヘルツ以上の高周波だけを流しても人体には何の変化も起こらないことなどが分かっています。

現在オルゴール療法は、リウマチ、脳梗塞、アルツハイマー、冷え性、うつ病など、およそ120~130種類の病気に対し、5000件以上の回復例が報告されています。しかし、西洋医学優位の日本でオルゴール療法は正式に認められていないことから、まだ7カ所の病院しか導入されていないのが実情です。

必ずしもオルゴールでなくてもいい

オルゴールの効果は、今のところ72弁以上のものしか分かっていません。それ以外では、オーケストラやパイプオルガンの演奏などが超低周波や超高周波の音を出していることが分かっています。

ちなみに、太鼓やピアノは高周波の音が出ていません。また、バイオリンは低周波の音が出ていません。しかし、フルートとピアノ、弦楽四重奏などの組み合せですと、超低周波と超高周波の両方の音が出ています。こうした音の組み合わせであれば、必ずしもオルゴールでなくともいいわけです。

音楽療法との違い

ただ、CDなどの人工的な音源は人間の耳で感知できる20~2万ヘルツの音しか出ていないため、リラクゼーション効果はあるものの、脳幹にはさほど影響を与えてはいません。

オルゴール療法は、曲調によるリラクゼーション効果より、むしろ耳に聞こえていない「音の響き」による脳幹刺激効果を利用したもので、森の中での生活でも、同様の効果が得られると考えられています。

身近にあるオルゴールの音色が、健康増進に役立つとすれば素晴らしいことです。今後は予防医療の分野でさらに注目を浴びそうです。

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