「亜健康」。この言葉が、今急速な経済発展を遂げている中国で注目されています。「亜健康」とは病気と健康の中間の状態、疲労やストレスで体調不良を覚えるものの、病院の診断では特に異常が見つからないといった半健康状態を指します。今回は、「亜健康」についてご紹介します。
中国人の7割が「亜健康」を自覚
熱帯と温帯の中間にある気候を亜熱帯と呼びますが、今中国では病気と健康の中間の状態、いわゆる半健康状態を「亜健康」と呼び、関心が高まっています。
中国でこの言葉が注目されているのは、不定愁訴と呼ばれる状態に悩んでいる人々が急増しているためです。2004年に中国の大学が行った調査では、中国で病気の人が15%、健康な人が15%、亜健康の人が70%を占めていることが明らかになっています。
2011年8月11日(木)、東京ミッドタウン内のd-laboで、柯彬(かひん)氏(中国科学技術未来研究会亜健康学会副理事長)が「亜健康」の概念について講演しました。
「亜健康」は、西洋医学的な診断では「異常なし」とされがちですが、放っておくと深刻な病気を招きかねません。
柯彬氏は東洋医学と西洋医学の両方を修めた現役の医師ですが、「亜健康」の時にいかに病気を防ぐかが非常に重要であるといいます。
「亜健康」が流行語に
目覚しい経済発展を遂げている中国では日本と同様、医療費が急激に増大し、大きな社会問題となっています。そのため、これまで「未病」と呼んでいた病気の手前の状態を「亜健康」という言葉で再定義し、医療費削減を目指す、「中和亜健康(亜健康を克服しよう)」運動が盛んになっています。
専門の研究機関や医療施設、民間のスパなども登場し、サプリメント産業などの「亜健康」関連ビジネスが急速に発展しています。
今や中国では、「亜健康」が流行語にもなり、健康状態だけでなく、国家の財政や政治、あるいは家庭や人間関係までも「亜健康な状態」などと例えることが多くなっています。
中国では「亜健康」に対する理解が容易
「亜健康」の状態は人それぞれで異なりますが、共通しているのは、体の生理機能や免疫力が低下し、社会生活が円滑に営めなくなるということです。
世界保健機構(WHO)では健康の定義を「体・心・精神・社会」の4つがいずれも健全であることとしていますが、「亜健康」もこれと同様に4つに分類されています。
それぞれの「亜健康」については、体では肩こりや倦怠感など、心では鬱状態やイライラなど、精神では生きるための目標の喪失や集中力の欠如など、社会的なことでは引きこもりなどです。中国では、ミックス型の「亜健康」の人々が最も多いといわれています。
もともと中国医学(東洋医学)では「未病」の考え方が根底にあり、「最高の医者とは病気を治す医者ではなく、病気をつくらない医者である」と捉えているため、「亜健康」への理解も容易です。
西洋医学は治療を得意としますが、病気にならなければ処方も治療もできません。しかし中国医学では何か症状が出ていれば、脈診、舌診、触診などあらゆる手法で診断をすることができます。そのため「亜健康」への対処は得意とするところであると柯彬氏はいいます。
最新の機器を用い、将来的な病気を予測
「亜健康」は病気ではないため、治療ではなく、「調整」を重視します。これにはマッサージや漢方、鍼灸など数多くの療法が中国にはあります。
「亜健康」の診断では、問診が主となりますが、近年は「亜健康の人間ドック」が普及し、総合的な診断を行うようになっています。この人間ドックでは最新の医療機器を使用し、クライアントの健康状態を多角的に調べます。例えば、経路の検査では、人体をCTスキャンのような機械にかけ、微弱電流を流しながら 異常箇所を探っていきます。
診断結果は西洋医学のように平均値からみて異常か正常かではなく、どのツボや経路の陰陽のバランスが崩れているのかなど、東洋医学的な観点から、過去の病歴、現在の症状、潜在的な病気の可能性などを診断し、調整していきます。
従来の人間ドックは、現在の健康状態を診断することを重視していますが、亜健康の人間ドックでは過去の生活習慣と現状を分析し、将来的な病気の予測も可能です。
健康な人はそれを維持するために日頃から養生し、亜健康の人は病気にならないために普段から調整を行うなど、従来の東洋医学のホリスティックな考え方を大切にし、それぞれに合ったライフスタイルを送ることが大切と柯彬氏はいいます。