健康豆知識

健康の温故知新

掲載11 「温浴」習慣、長寿に貢献

日本人の長寿の秘訣は「和食」にあるといわれていますが、加えて、「温浴」にもあるのではないかということが、近年さまざまな研究で明らかになりつつあります。日本は火山国で、各地に湯量の豊富な温泉が点在し、そうした温泉の恩恵にも浴しています。今回は「温浴」の効用についてご紹介します。

「温浴」は日本独特の文化

欧米では体を清潔に保つためにシャワーを浴びますが、日本には加えて、入浴という「温浴」の習慣があります。この体ごと風呂に浸かるという習慣は日本独特の文化です。

「温浴」により、新陳代謝が促進され、老廃物が洗い流され、体の組織がリフレッシュします。また、血管が拡張し、凝りや痛みがほぐれ、リラックスが得られます。日本人の多くが1日で一番安らぐ時は入浴時と答えるといいますが、それも納得できます。

日本に2万8000カ所以上の源泉

日本は火山国でもあり、各地に温泉地があることから、昔から温泉の恩恵にもあずかってきました。
現在、日本には2万8000カ所以上の源泉があるといわれます。日本人は温泉が大好きで、1年で延べ1億32万人以上が訪れるといいます。国民一人当たりでは、1年に1泊の割合で誰もが温泉を利用していることになります。

春夏秋冬、自然の風景を愛でながら露天風呂に浸かり、日々の疲れを癒す。そして、時には病んだ体を癒す。
温泉療法といえば、玉川温泉や草津温泉、三朝温泉などが有名ですが、皮膚疾患からガンといったさまざまな疾患の療養で長期滞在する「湯治」についても日本人は昔から行ってきました。

「温熱」の優れた効用

体を温めると免疫力が高まるということも最近よくいわれるようになりました。やはり、日本人の「温浴」習慣は長寿に大きく貢献しているようです。

ここで、「温熱」ということにも少しふれておきましょう。
近年、エステやスパで「岩盤浴」を取り入れるところが増えています。遠赤外線による温熱効果で発汗を促し、体内の老廃物を排泄させることを目的としたものです。
また、ガンの代替療法として、ハイパーサーミア(温熱療法)も知られるようになりました。

ハイパーサーミアは、ガン細胞に熱を与えて縮小させたり増殖を抑えるという療法です。
本来、ヒトの体温は41℃以上にはなりません。42.5(~43)℃以上になると細胞は死滅してしまいます。ハイパーサーミアはこれを利用して、ガン細胞だけ温度を上げ、死滅させようというものです。

古代ギリシャ時代の医聖といわれたヒポクラテスもガンが熱で消滅することを報告しています。また、感染すると高熱を出す数種類の菌をガン患者に注射し、ガン治療が行なわれたことも報告されています。(日本ハイパーサーミア学会より)

日本に数ある温泉、それぞれの泉質のもつ独特の効用やハイパーサーミアについての詳細はここでは割愛しますが、日々私たちが入浴で得られる「温浴」効果について最新研究を報告いたします。

体を温めて体内酵素を活性化

2010年11月14日(日)、大手町サンケイプラザで、アンチエイジングセミナー2010が開催され、「入浴は健康で長生きをする秘訣」と題して、前田眞治氏(国際医療福祉大学大学院教授 温泉療法専門医)が、「温浴」の効用について報告しました。

人は平均36℃~37℃の体温で正常に活動していますが、健康維持に必要不可欠な体内酵素は37℃で最も効率よく働くことが分かっています。体内酵素の活性化には、体を冷やさず温めておくことが大切です。

さらに、「温浴」という習慣が健康増進やアンチエイジングをもたらす大きなカギとなることが分かってきました。体温の1℃~2℃の上昇は、人にとって極めて適度な良い刺激で、次にそうした刺激がきた時に備えようと反応します。この反応が免疫力、生体防御力、組織修復力を高め、健康増進へとつながると前田 氏はいいます。

体を温めるとHSPが増加

また、「温浴」によるHSPの活性も見逃せません。HSPとはヒートショックプロテインのことで、熱ショック蛋白質とも呼ばれています。

私たちの体は病気になると細胞内の蛋白質がダメージを受けますが、HSPはダメージを受けた蛋白質を修復し、元気な細胞に変える働きをします。

このHSPは、熱による適度な刺激がストレスとなって増えることが前田氏らの研究から分かっています。つまり、「温浴」でHSPが増えるのです。

HSPが体内に生成されると、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の働きが活性化します。NK細胞はガン細胞や病原菌を見つけ、死滅させる働きを体内で担っています。

とくに温泉での「温浴」は、温泉そのものの成分が体に付着するため、保温効果は水道水より高く、HSPは温泉温浴の直後から増加し、2日後にピークに達するといいます。

また、HSPはジョギングや適度な運動で体内を温めることでも生成されることがわかっています。高齢者や運動のできない人は、入浴でHSPが得られますので、積極的に入浴や温泉で体を温めるといいでしょう。

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