健康豆知識

健康の温故知新

掲載10 アーユルヴェーダ、抗老化で注目

アーユルヴェーダは、インドで生まれた5000年以上の歴史を持つ世界最古の伝承医学で、世界三大伝承医学の一つです。日本では、エステやスパでオイルマッサージによる発汗や体内毒素の排泄が人気ですが、高齢化時代を迎え、アンチエイジングでも注目を集めています。

ドーシャ(生命エネルギー)の崩れを正す

アーユルヴェーダとは、サンスクリット語のアーユル(生命)とヴェーダ(科学)を合わせた言葉で、「生命の科学」「生命の知恵」という意味です。

1997年には、世界保健機構(WHO)でもアーユルヴェーダを予防医学として正式に承認し、21世紀にふさわしい代替医療として、広く知られるようになりました。

アーユルヴェーダでは、宇宙に存在する全てのものは、「空」「風」「火」「水」「地」の5要素から成り、それぞれ組み合わせで「ヴェータ」「ピッタ」「カパ」と呼ばれる3種類のドーシャ(生命エネルギー)を形成するとしています。

このドーシャのバランスが健康状態に深く関わるという考えから、ドーシャの崩れを問診、舌診、脈診などで診断し、オイルマッサージや解毒のためのプログラム(断食など含む)、食事療法などで不調和を改善していきます。

アーユルヴェーダがもたらす健康効果は長い歴史の検証で立証されていますが、日本ではアーユルヴェーダによる医療行為は認められていません。そのため、エステティックサロンで使用されることが多く、痩身やリラクゼーションの療法ととらえられがちです。

本来、アーユルヴェーダのオイルマッサージは、身心の不調の原因=未消化物=毒素(アーマ)を取り除くためのものです。アーユルヴェーダの毒素排泄プログラムは「パンチャカルマ」と呼ばれ、オイルマッサージによる発汗、浣腸や断食などが行われます。

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日本の風土や食材と合いにくい面も

アーユルヴェーダでは、それぞれドーシャに沿った食事療法を行いますが、風土や食材、インド人との体質の違いなどから、そのまま日本人が実践するのは難しいといった面もあります。

とくに、食材の組み合わせが日本人に馴染みにくいということがあります。例えば牛乳ですが、インドでは牛を神と同意にとらえています。牛乳は牛にストレスがほとんどない状態で搾られ、完璧な食材と位置付けられています。アーユルヴェーダでもそれは同様です。

しかし、日本人はインド人ほど牛乳を分解する消化酵素を持っていないため、アレルギーやお腹をくだしたりする人が多くいます。

また、アーユルヴェーダでは、牛乳を肉、魚、酸味、フルーツと合わせることは消化の点からタブーとしています。

日本人は魚や酸味を多く摂るため、こうしたアーユルヴェーダの食べ合わせのきまりが、日本人には合い難いといったことがあります。

また、食材の組み合わせ以外にも幾つか解決しなければならない問題点があります。本場アーユルヴェーダで用いる薬草やオイルの安全性や有効性が日本で全て立証されているわけでありません。一部に砒素や水銀などの重金属が多く含まれていることも懸念材料になっています。

アーユルヴェーダを単に美容やリラクゼーションのためでなく、本格的に行おうとするとこうした幾つかのハードルを越える必要があります。

求められる日本人の体質に合ったアーユルヴェーダ

ここで少し、日本におけるアーユルヴェーダの歴史を紹介しましょう。
アーユルヴェーダが日本で認識されるようになったのは1970年代といわれています。「日本におけるアーユルヴェーダの現状と将来」(上馬場 和夫)によると、当時大阪大学教授の丸山博氏が幡井勉氏(東邦大学名誉教授)らとグジャラート・アーユルヴェーダ大学を訪問した際、アーユルヴェーダの素晴らしさに心打たれたといいます。帰国後、1970年に、「アーユルヴェーダ研究会」を設立します。

その後、幡井氏は東洋伝承医学研究所&ハタイクリニックを設立し、東洋医学と西洋医学の融合した診療を目指します。1994年には、同研究所でアーユルヴェーダの教育プログラムを開始し、メイン講師にクリシュナUKを招き、幡井氏、西川眞知子氏、上馬場和夫氏らが補助に付きます。1999年に、「アーユルヴェーダ研究会」は、「アーユルヴェーダ学会」へと改称し、公的認知を高めていきます。

丸山氏、幡井氏は故人となられましたが、インドと日本、風土や食材の違いがあったとしても、アーユルヴェーダの素晴らしさを日本に広く知らしめ、根付かせたいという思いがあったに違いありません。彼らのそうした思いは後継へと受け継がれます。

2010年9月14日(火)、東京ビックサイトで開催されたダイエット&ビューティーフェアのセミナーで、前述の西川眞知子氏がアーユルヴェーダについて講演しました。

現在、西川氏はアーユルヴェーダを日本の風土にあったものに調和させる研究を行なっています。
アーユルヴェーダでは、解毒・排泄を重視するため、「排泄の医学」と呼ぶ人もいます。身心に溜まった不要な物を取り去ることで自然治癒力が高まり、その人の本来の輝きが取り戻せるといいます。

西川氏はアーユルヴェーダの「引き算による美学」を尊重し、日本の風土や食材に合わせたアーユルヴェーダの日本バージョン、「和ゆるヴェーダ」を提唱しています。

アーユルヴェーダによるアンチエイジング

西川氏の「和ゆるヴェーダ」では、アーユルヴェーダをベースにアンチエイジングにつながる食事の摂り方や運動、ライフスタイルについて次のように提案しています。

1)「自分にあった食事を規則正しく」
アーユルヴェーダでは3つのドーシャから自分にあった食材を選ぶよう教えています。これは「和ゆるヴェーダ」も同様です。「甘」「辛」「酸」「塩」「苦」「渋」の味覚のバランスをとり、食事は20分~30分かけてゆっくりと摂る。腹八分目にして胃のスペースを保ち、消化しやすい状態を作ることが大切です。

2)「酵素と良質な水」
酵素栄養学は近年日本でも脚光を浴びています。アーユルヴェーダでは酵素については取り上げていませんが、消化を促すのに大切ですから、食事や健康補助食品での摂取を心がける必要があります。水については、もちろんミネラル豊富な良質な水が好ましいのですが、白湯が消化力をアップし、毒出し効果が期待できますので、起床後、就寝前に飲用するといいでしょう。

3)「自分に適した運動」
日本人にはウォーキングが最も適しています。また、ヨガでは「呼吸の長さが寿命をコントロールする」といいますが、全ての動作において、呼吸をできるだけ長くゆっくり行なうことが心身のバランスの調整に役立ちます。

4)「良質な睡眠」
カラーセラピーによるカラーブリージング(色を取り込む呼吸法)など行い、良質な睡眠をとることでアンチエイジングがもたらされます。

5)「幸福感」
愛情、笑い、感謝の気持ちをいつも絶やさず、ネガティブな言葉は使わないようにすると表情も変わり、アンチエイジングにつながります。

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