キキョウは、日本の文化になじみ深い花のひとつで、古くから和歌や絵画、紋様、家紋などにも用いられ、親しまれてきました。
万葉集に由来する秋の七草の一つとしても広く知られ、古くから日本人の心に寄り添ってきた花といえます。万葉集に登場する「朝貌(あさがお)」は、現在のアサガオではなく、キキョウを指すと考えられることが多いとされています。
キキョウが日本の暮らしと深く関わってきた理由のひとつに、かつては日本各地の日当たりのよい草地などで見られる、身近な植物だったことがあります。星形に開く青紫の花は涼やかで、野の景色を彩る花としても親しまれてきました。また、その端正な形から桔梗紋として家紋にも用いられ、武家文化の中でも広く知られています。
しかし近年では生育地の減少や採取などの影響で野生個体が減っており、絶滅危惧類に位置づけられています。
キキョウは、日本だけでなく、中国や朝鮮半島を含む東アジアに分布する多年草です。英名のバルーンフラワー(balloon flower)は、つぼみが風船のようにふくらむ姿に由来するとされ、ふくらんだつぼみがほどけるように開き、星形のように花びらがきれいに分かれて咲く姿には、キキョウならではの可憐さがあります。日本でのキキョウの開花時期は、おおむね6月から9月ごろで、地域差はあるものの比較的長く楽しめます。
キキョウは、その美しさで愛されてきただけでなく、生薬としても重宝されてきました。薬用として用いられるのは主に根の部分で、乾燥させた根は桔梗根(ききょうこん)と呼ばれ、日本薬局方にも収載されています。成分としてはプラチコジン類をはじめとするサポニンなどが知られており、古くから咳や痰、のどの不調、排膿などに用いられてきました。
現在でも、キキョウは漢方の世界でよく知られる生薬のひとつです。代表的なものには桔梗湯(キキョウトウ)のほか、桔梗石膏(キキョウセッコウ)や排膿散及湯(ハイノウサンキュウトウ)、十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)などがあります。
秋の七草として知られながら、実際には初夏から花を見せてくれるキキョウ。
見かけた際には、ぜひその涼やかで上品な姿を楽しんでみてください。
