健康豆知識

健康の温故知新

掲載144 「食べて、祈って、耕して」~「食」と「寺院」と「農園」が作る認知症共生社会②

認知症に関する考え方の大転換

認知症の予防や共生について耳にすることが増えました。「人生60年」の時代には、60歳の元気な人と、60歳の認知症の人の差は、極めて大きかったと考えられます。しかし、実は100歳の人に物忘れ検査をすれば、ほとんどの人が認知症のレベルの点数であると指摘されています。そのため、少し前から「人生100年」の時代には認知症の予防を追求することはあまり意味がなく、認知症になっても大丈夫な社会を作ろうという考え方が主流になってきているのです。

認知症に関する政府の基本的な考え方を示す「認知症施策推進大綱」(令和元年)では、認知症の予防と共生が「車の両輪」とされています。21世紀に入り、認知症に関する考え方が大転換し、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域環境で自分らしく暮らし続けることができる社会」が目指されています。

地域包括ケアシステムに足りないもの

政府は、認知症になっても地域で安心して暮らすために公的・民間のサービスを継ぎ目なく提供するという地域包括ケアシステムという考え方を推進してきました。この地域包括ケアシステムにまだ組み込まれていない仏教という重要な資源がある、と岡村氏は指摘します。
海外では、教会などはホームレスの人の支援をしたりしていることが知られています。一方で、日本では寺院はあまり社会的な活動をしていないような印象がありますが、実際は非常に多くの社会的活動をしてきているのです。具体的には、終末期のケアを支える寺院や、社会に積極的に関わって介護者を支える「介護者の心のやすらぎカフェ」を始める寺院などもあるのです。特に浄土宗ではマニュアルを作り資金援助もし、介護者カフェを積極的にバックアップしており、現在では30ヵ所程度の寺院が開催しています。また、寺院と看護訪問ステーションの協働(看仏連携)や、こども食堂を開催して、子育てを支援する寺院も見られるようになってきています。

講習会資料より

高齢でも幸せでいられる

歳をとると認知機能が自然に低下しますが、幸福度は逆に上がっていくことが知られています。われわれ人間は、生まれたときは幸福で、社会の中で苦労して、頑張って生きていくときは少し幸福度が下がります。とはいえ、認知症があっても幸福で過ごすにはいろいろな仕掛けが必要であり、そのための研究が進んでいくことが期待されます。

講習会資料より

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