健康豆知識

健康の温故知新

掲載141 コロナ禍でも元気に過ごす~感染を防止し、健康を保つ秘訣とは~ ①

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、すでに1年以上にわたっており、私達の生活に大きな影響を与えています。東京都健康長寿医療センター主催の第158回老年学・老年医学公開講座「(コロナ禍でも元気に過ごす~感染を防止し、健康を保つ秘訣とは~)2021年9月12日オンラインにて実施)を2回にわたってご紹介します。
今回は、「新型コロナウィルス感染流行の現況と高齢者が注意すべきこと」(東京都健康長寿医療センター センター長 許 俊鋭氏)をご紹介します。

新型コロナウィルス感染症の症状

典型的な症状として、発症すると1週間程度、風邪症状・臭覚味覚障害が続きますが、ほとんどの場合がそのまま治癒します。しかし、一部の方では1週間目くらいから呼吸器症状が悪化してしましまうこともあります。一方で、軽症であった場合でも、急性期を克服しても後遺症が問題となっており、倦怠感、呼吸苦、記憶障害、睡眠障害や集中力の低下などの症状が残ってしまう場合があります。感染時無症状の場合でも、2割で後遺症が見られると言われるため、注意が必要です。

感染経路

それでは、新型コロナウィルス感染症は、どのようにして感染が拡大がするのでしょう。

①  飛沫感染
感染者の飛沫(くしゃみ、咳、唾液など)と一緒にウィルスが排出され、そのウィルスを口や鼻から吸い込んだ人が感染するものです。

② 接触感染
感染者のウィルスが付着した部分に接触することによって、ウィルスが未感染者の手に付着し、それを鼻や口から取り込むことで感染します。

③  空気感染
これまでの感染例を見ると、空気感染は起きていないと考えられるものの、閉鎖空間において近距離で多くの人と会話をするなどの一定の環境であると、咳やくしゃみ等がなくても感染を拡大させるリスクがあります。WHO新ガイドライン(2021.9)では、混雑し換気が不十分な場所で新型コロナウィルスが空気感染することは無視できない、とされています。

高齢者、要介護者の免疫機能と感染

図1を見ると、アルブミン(血液中のたんぱく質の濃度)と抗原提示細胞の関係を見ると、アルブミンが低いほど、抗原提示細胞の数値が低いことが分かります。このことから、栄養障害が免疫力の低下と密接に関係していると許氏は指摘します。免疫力の向上のためにも、十分な栄養を摂ることが大切であると言えるでしょう。
また、老年症候群の中でも、特に嚥下困難、咳痰、低栄養がコロナ感染リスクと関わっていると考えられています。口腔機能の維持は非常に大切です。むせる、食欲がない等の些細な衰えが重なって口腔機能が低下すると、栄養が低下して免疫力の低下につながってしまいます。高齢者の肺炎予防において、耐性菌を作らないために抗菌薬を使わない肺炎治療・予防対策の必要性が検討されていますが、対策として、口腔内細菌叢の改善(うがい、はみがき、口腔ケア、歯科治療)、嚥下リハビリ(食べる、声を出す、会話を励行する、音読する)、脱水の改善、栄養対策などが挙げられます。

2021年11月①

2021年11月②

 

コロナ禍におけるフレイル予防

感染症予防のため外出を控え、「生活不活発」による健康への影響が危惧されています。動かないこと(生活不活発)により、歩くことや生活動作が行いにくくなったり、疲れやすくなったり、フレイルが進んでしまいます。フレイルが進むと、身体の回復や抵抗力が低下し、感染症も重症化しやすい傾向にあるため、フレイルを予防することはとても大切です。

許氏は、フレイルの進行を予防するために、以下のこと心掛けるように指摘しています。
① 動かない時間を減らしましょう、自宅でもできるちょっとした運動で体を守りましょう。
② しっかり食べて栄養をつけ、バランスの良い食事で抵抗力を高めましょう。
③ お口を清潔に保ちましょう。しっかり噛んで、できれば毎日おしゃべりをして、口腔障害を防ぎましょう。
④ 家族や友人との支え合いが大切です。活発な日常生活を維持しましょう。

さらに、ウォーキング・筋力トレーニングは精神的健康に維持効果があることが明らかになっています。外出の自粛で外に出られない場合も、家の中ででもウォーキングなどを続けて活動量を増やすように心掛けましょう。

TOP