健康豆知識

健康の温故知新

掲載139 国立健康・栄養研究所100周年記念 健栄研フェスタ (3)

高齢化社会において、栄養への関心はますます高まっています。今回は、国立健康・栄養研究所が実施したイベント「健栄研フェスタ」(2021年3月)の講演・講義を3回にわたってご紹介します。今回も、前回に引き続き国立健康・栄養研究所各部からの講演をご紹介します。

2型糖尿病患者の睡眠と筋力・骨格筋量の関連

臨床栄養研究部栄養療法研究室は、「2型糖尿病患者の睡眠と筋力・骨格筋量の関連についての研究」と題して講演しました。
糖尿病患者では、様々な要因から筋力が弱く、身体機能の低下のリスクが高いため、サルコペニアになる可能性が高いと指摘されています。そのことから、糖尿病患者においてサルコペニアの予防や改善は、大きな課題であると林氏は指摘します。同研究室では、骨格筋の健康維持にはたんぱく質の摂取やホルモン等が関与しており、睡眠がそれらに密接に関わっていることについて研究を進めています。

睡眠制限が運動パフォーマンスを低下させることはこれまでも複数の論文で報告されていますが、それだけではなく、睡眠制限により糖質や脂質の摂取量が増えたという報告もあります。睡眠制限と食事の関連について、これまで報告されている論文をまとめると以下の通りです。
① 睡眠制限は、高たんぱくの食事や野菜・果物に比べて、甘くてでんぷんの多い食事嗜好を増やす
② 睡眠制限をすると、、翌日に甘くて脂っこい、高カロリーの食事を購入することが多い
③ 睡眠制限をすると、不健康な食事に脳の食事報酬エリアがより反応するという報告がある
つまり、睡眠制限が食行動・食事内容に影響を及ぼすことが示唆されています。

これに基づき、2型糖尿病患者の睡眠の量や質の変化とサルコペニアについて調べたところ、睡眠状態と筋力が関係していることが明らかになりました。まだ、今後のさらなる研究が必要ですが、2型糖尿病患者のサルコペニアを予防・改善するためには食事や運動だけでなく、睡眠についても注意をする必要があると言えるかもしれません。

概日リズムと健康維持

栄養・代謝研究部の時間栄養研究室では、「概日リズム」と健康維持について研究しています。私たちの体には、「概日リズム」という24時間周期で変化するリズムが刻まれていて、体温変化やホルモン分泌にも、1日の周期があります。脳には中枢時計、それぞれの臓器には末梢時計が存在し、1日の周期で活動しています。しかし、深夜残業などの夜更かし、朝食の欠食、朝寝坊などで中枢時計のリズムが乱れると、肥満、癌、糖尿病などの疾患を発症しやすくなることが明らかになっています。

WHR 20219月号 健康豆知識1

(図1 講演資料より)

それだけではなく、実は脂質や砂糖を多く含む食事をとると、それでも中枢時計は乱れやすくなります。つまり、肥満を生じさせる食事によっても、時計遺伝子の発現が変化してしまうことも指摘されています(図2)。

WHR 20219月号 健康豆知識2

(図2 講演資料より)

同研究室では、時間栄養学を活用して、これらの概日リズムが乱れている人に対して、適切な食事時間、食事内容によって正常化して疾病を改善し、健康を維持をするための研究を進めています。今後のさらなる研究が期待されます。

TOP