健康豆知識

健康の温故知新

掲載138 国立健康・栄養研究所100周年記念 健栄研フェスタ (2)

高齢化社会において、栄養への関心はますます高まっています。今回は、国立健康・栄養研究所が実施したイベント「健栄研フェスタ」(2021年3月)の講演・講義を3回にわたってご紹介します。2回目は、国立健康・栄養研究所各部からの講演をご紹介します。

国民健康・栄養調査の歴史と役割について(栄養疫学・食育研究部 )

同研究所では、厚生労働省が実施する「国民健康・栄養調査」の集計業務を行っています。国民栄養調査からは多くのことが分かりますが、その1例が、日本は世界的に見ても肥満が少ない国であるということです。ただ、その一方で、低体重(低栄養)の傾向もあることもわかりました。高齢者では6人に1人が低栄養の可能性があり、若い女性では5人に1人が「やせ」に分類されます。中年期の肥満と同様に、低栄養を防ぐ努力も必要なようです。

また、「国民健康・栄養調査」では、食塩そのものの摂取量は減っているものの、依然として調味料からの食塩摂取が多いこと、そして塩分摂取量に減少傾向は見られますが、現状値がまだまだ目標値には達していないことなどが分かります。塩分の摂取量を減らすためには、食塩の摂取を減らすだけではなく、調味料からの塩分摂取についても注意することが必要であることが分かります。

健康寿命延伸に資する身体活動と栄養の相互作用(身体活動研究部)

身体活動部では、体力が高い人と低い人を長期間追跡して、病気の発症などの健康リスクとの関係を研究しています。近年の研究では、平均年齢50歳の約23,000人を対象に、柔軟性と高血圧の関係を調べる5年間にわたる追跡調査を実施しました。その結果、柔軟性が最も高い群では、最も低い群よりも高血圧の発症率が低いことが分かりました。そのことから、全身持久力だけではなく、柔軟性など他の体力的要素を強化することで、高血圧の発症リスクを抑制できることが明らかになりました。

柔軟性と高血圧

また、京都府亀岡市と協力し、亀岡市在住の高齢者を対象に外傷予防と介護予防を推進して検証する「亀岡スタディ」を進めています。この研究では、因果関係は明らかになっていないものの、以下のことが示されました。

・ 歩数が多い人はフレイルの人が少ない
・ 咀嚼能力が低い人はフレイルの人が多い
・ たんぱく質摂取量が多い人はフレイルの人が少ない
・ 高蛋白質食品の中で魚介類や乳製品の摂取頻度が多い人はフレイルの人が少ない
・ エネルギー摂取量が多すぎる人、少なすぎる人はフレイルの人が多い
・ 肥満の人、やせの人はフレイルの人が多い
・ 緑茶の飲用頻度が多い人は、口腔の健康度が高い
・ 果物や野菜の摂取頻度が多い人は口腔の健康度が高い

次回も、同研究所の最新の研究成果についてご報告します。

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