健康豆知識

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掲載134 高齢者がかかりやすいがん、その関連因子と見つけ方

高齢になるとがんで亡くなる人が増えてきます。発がんに関連する因子としては、タバコや成人期の食生活、肥満の影響が大きいと言われていますが、今回は高齢者がかかりやすいがんの種類とその発見方法について、令和元年11月20日に実施された第156回老年学・老年医学公開講座から、「高齢者がかかりやすいがん、その関連因子と見つけ方」(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム 研究部長  北村 明彦氏)の講演をご紹介します。

高齢期の健康管理

高齢期になってから健康管理についていろいろ気を付けている方は多いかと思いますが、気を付けたい健康管理は、以下の5つに集約されると北村氏は指摘します(図1)。日本人の死因として、がんが増加していることから、この中でも特にがんの予防とコントロールは健康寿命の延伸のために非常に重要だと考えられます。男女ともに増加の傾向にあるのが肺がんと大腸がんで、注意が必要でしょう。また、少ないながらも増加しているのが膵臓癌で、また、比較的若い世代の女性に見られるのが乳がんです。

高齢者の癌(図1、図2)

発がんに関連する因子

がんの発症には、様々な因子が挙げられますが、全体として大きな割合を占めているのはタバコ、多量飲酒、成人期の食事・肥満であることが指摘されています。その中でも、生活習慣に関わる部分での大きな危険因子を挙げると、図2の通りとなります。また、肥満はがんの危険因子となりますが、やせも危険因子となるため、肥満・やせすぎのいずれも避けて、丁度良い体型を維持することが大切です。禁煙し、飲酒量はほどほどに抑え、適度に運動をして、健康的な生活を送るように心掛けましょう。

高齢者の癌(図2)

 

がんの健診

また、予防については発がんの危険因子を避けることが大切ですが、治療のためには、早期発見が大切です。早期発見のためには、やはりきちんと健診を受けることが大切です。検診についてはそれぞれについて厚生労働省から指針が出されており、また、地方自治体から補助が出るものもあります。
ただし、検診にも利益と不利益があると北村氏は指摘します。利益は、早期発見して治療に結び付けることができる、また、異常が見つからずに安心できる、という点です。一方でがん検診の不利益は、検査の手間や費用が掛かり、苦痛を伴う場合もある、ということが挙げられます。国の指針で定める対策型の検診は、利益・不利益のバランスを考慮して、集団にとっての利益を最大化するように設計されていますが、任意の検診の場合は、個人のレベルで利益、不利益のバランスを判断する必要があります。
年齢を重ねても、きちんと検診を受けて早期に治療を開始して、進行を遅らせるすることができれば、その後の余生を楽しむことができます。がんに罹っても、気力を保って生きることが大切であると北村氏は指摘します。そのためには、①がんの管理(適切な治療、がんを進行させない食事、生活)、②心身機能、生活機能を保つ(身体機能、認知機能、栄養機能、口腔機能、心理機能、社会機能など)、③がん以外の病気の管理、が重要であると北村氏は述べています。

高齢者の癌(図3)

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