健康豆知識

健康の温故知新

掲載133 笑う門には福来たる?~医学で解き明かす笑いの効果~

「笑う門には福来たる」とよく言いますが、近年の研究で、「笑い」は健康ももたらすことが期待されることが明らかになりました。今回は、令和元年12月8日に実施された第18回東京都医師会 都民公開講座「フレイル・認知症を知って、楽しく健康長寿」から、「笑う門には福来たる?~医学で解き明かす笑いの効果」(大平哲也氏/福島県立医科大学医学部疫学講座 主任教授)の講演をご紹介します。

「笑い」の定義とは?

それでは、まず「笑い」の定義とは何でしょうか?笑いとは「ユーモアに対する身体的な反応」であり、「身体動作」と「発生」の2つから構成され、笑うと腕、足、体躯など身体の多くの部分の筋肉を使う、と大平氏は指摘します。そのため、「笑い」とは感情ではなく行動であり、「面白い」と思っただけでは笑いではないと言えます。

笑っている人は長生き?笑いと認知機能

1950年代に米国で実施した研究では、230人の野球選手の顔写真を分析して追跡調査したところ、満面の笑みを浮かべていた選手の平均寿命は79.9歳で、笑顔が全く見られなかった選手の平均寿命は72.9歳であり、その差が7歳もあったということが指摘されています。また、国内で実施された研究では、笑いの頻度と死亡が関係していることも明らかになっています(図1)。また、「笑う」ということは瞬時に反応することであるため、認知機能と深く関わっている可能性があると大平氏は指摘しています。つまり、笑う頻度が減るということは認知機能の低下を示唆しているとも考えられます。(図2)また、笑うということは喉を使うため、笑いの頻度が低下することは、嚥下機能低下や誤飲性肺炎の発生しやすさに関わります。笑うことが少ない人は口腔機能が低下気味であることが、これまでの研究でも指摘されています。

笑 1

 

笑 2

笑いの効果

大平氏は、笑いの効果を以下のようにまとめています。
・ 痛みに効く
・ 糖尿病者の血糖値を下げる
・ アレルギーを低下させる
・ 高齢者の睡眠をよくする
・ 免疫力を上げる
・ 循環器、呼吸器疾患に良い
・ 認知症予防になる
・ ストレス解消になる
・ うつ症状を改善させる
また、大平氏は、「何に対して笑うか」ではなく「笑う」という行為が心にも体にも良い、と述べています。
笑っているときは、自然に腹式呼吸になるため、リラクゼーションを導きやすくなります。また、それと合わせて脳内が一瞬空っぽになるため、痛みやストレスの悪循環を断ち切るリセット効果もあるのです。そのため、笑いにはストレスを軽減することによって脳卒中・心臓病を減少させたり、脳を活性化して認知症を予防させる効果も期待されます。また、笑うことによって社会的ネットワークが増加し、認知症リスクの低減、長生きや身体機能の維持にも役立つと考えられます。

「笑う門には福来たる」

それでは、日常生活の中で「笑い」を実践してみましょう。自分自身でユーモアのセンスを磨く、一緒にいて心地よい人との付き合いを増やす、鏡を見るときには必ずにっこりする、などを心掛けるだけでも「笑う」機会が増えます。実は、作り笑顔にも効果があり、作り笑いによって眉間の緊張をほぐすだけで、末梢の血流が改善されることも実験で明らかになっています。「笑う門には福来たる」、笑って、健康と幸福を呼び寄せましょう!

TOP