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2005年11月記事 vol.18

音楽の癒し効果、医療現場で活用 ミュージックセラピー(2)

kaigai17 いつの時代も、人々の心を癒し、慰めてくれるのは音の奏でるメロディーであった。近年、現代医学も音楽の癒し効果に着目し、積極的に医療現場での活用を試みている。米国における音楽療法の最新情報を報告する。

1950年代にアメリカで音楽療法の専門機関が発足

音楽療法の一環として、「モーツアルト効果」という言葉がブームになったのは、まだ記憶に新しい。1993年、Natureに掲載されたUniversity of California, Irvine(UCI)の研究者グループによる研究が一躍スポットライトを浴びた。UCIの学生36人にモーツアルトのソナタを聞かせたところ、試験でIQが8~9ポイント上がったことが判ったという。

最近、米国では大病院をはじめ、養護ホームやリハビリテーションセンター、ホスピスなどで、音楽セラピストによる療法が盛んに行われている。

セラピストを養成する動きも活発で、American Music Therapy Associationによると、約70大学でカリキュラムが組まれており、その後、インターンシップ、資格試験などを経て正式なセラピストが続々誕生しているという。

音楽療法は、医師と患者とのつながりを確立するために使用される場合が多い。セラピストは、患者のコミュニケーション能力や認知力、運動能力、感情、社会スキルの改善などを目標にプログラムを組む。

音楽の持つヒーリング効果については、すでに古代ギリシャの時代から認知されていたといわれる。近年、第2次世界大戦後に、Veterans Administration hospitalで傷を負った患者に音楽を聞かせ、治癒効果が認められたことから、アカデミックな研究対象として扱うようになる。1950年代には、アメ リカで始めて正式に音楽療法を指導する専門機関が発足する。

1998年には、The National Association of Music TherapyとAmerican Association of Music Therapyが一つにまとまり、現在のAmerican Music Therapy Association(米国音楽セラピー協会)となる。

エンドルフィンを多く分泌、鎮痛効果が期待

音楽は、全ての人々に何らかの身体及び精神的影響をおよぼすと考えられている。音色の種類で、心拍や血圧、血流の酸素量が変化する。心臓の鼓動は、音量 や音速により早くも遅くもなる。音量が大きく、リズムが早いと、心拍や血圧が上昇する傾向がある。また、筋肉の緊張を和らげ、可動を高めることも報告され ている。
また、自然の鎮痛剤といわれるエンドルフィンを増大させることも明らかになっている。エンドルフィンの分泌が多いと、鎮痛効果が期待できる。

パーキンソン患者への治療の一環として音楽療法が使われることも多い。イタリアの研究者グループによるPsychosomatic Medicine誌発表の研究では、軽度から中程度の症状のパーキンソン病患者32人を、1)運動など身体プログラムに毎週、3ヶ月間参加、2)音楽療法 (音楽鑑賞、楽器を使って演奏、ダンスなどを含む)に毎週参加―、の2グループに分けた。

結果、1)の身体プログラムでは身体のこわばりが改善したが、日常生活での全般的な可動という点では、それほど効果が見られなかったという。一方、2) の音楽療法では、調理や洋服を着るなどの日常の可動が向上し、筋肉が突然動かなくなる、転倒するなどの状態が減少したという。

自閉症や認知症など、精神機能の向上に期待

音楽療法は分娩時にも大きな効果をもたらすことが明らかになっている。音楽を流すと、陣痛や不安感が低減するという報告もある。

また、精神機能にも大きな影響を与えるといわれる。記憶力や学習能力が増大することから、児童の学習障害の治療にも応用されている。現在、特に研究が行われているのが自閉症治療。音楽療法により、自閉症児が他人と係わり合い、学習能力が向上したという報告もある。

その他、薬物中毒、統合失調症、パラノイア、不安感、といった症状についても、音楽療法によるストレスの軽減から、自己の感情を適正に表現できるようになったということも報告されている。

女児のみに起こる進行性の神経疾患であるレット症候群患者(6歳)を対象にした研究では、30分間の音楽療法を施したが、手先の機能やコミュニケーションにおける集中力などで改善が見られたことが分っている。

また、認知症患者を対象に、音楽療法の有効性を調べた研究(総合25セッション構成で、1時間の音楽療法を週に2回、3ヶ月間実施)では、患者16人の半数を音楽療法グループ、残りを対照グループとした。Mini-Mental State Exam、Gottfries-Brane-Steen Scale(老年期認知症行動評価尺度=GBS)などを使用して評価した結果、音楽療法後、格段に改善したことが分った。

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