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2021年12月号記事 vol.211

口の健康と身体の健康

WHR202201
口腔衛生が身体の健康に深く関わっていることが、近年指摘されています。今回は、日本国内での研究から、口腔機能と健康の関係についての報告をご紹介します。

中年期でも口の健康と栄養状態が有意に関連

口腔機能が低下している高齢者は栄養状態も良くないことが知られていますが、このような関連は非高齢者でも認められることが明らかになりました。東京歯科大学老年歯科補綴学講座の上田貴之氏らの研究によるもので、詳細は「Clinical and Experimental Dental Research」に2021年11月17日掲載されました。

研究の対象は、東京都内の歯科医院(単施設)で2016年7月~2018年6月に歯科健診を受けた40~64歳の中年期成人117人。口腔機能は、残存歯数、口腔水分、口唇と舌の巧緻性、舌圧、口唇閉鎖力、および咀嚼能力で評価しました。一方、栄養状態は、BMI、除脂肪量指数(FFMI)、および骨格筋量指数(SMI)で評価しました。

栄養状態関連指標を分析した結果、全ての栄養関連指標について、舌圧および口唇閉鎖力が低いほど低値という有意な関連が認められました。この結果から著者らは、「中年期成人においても口腔機能が低下している人の存在が認められる」とした上で、「歯科医院外来の中年期患者では、舌圧と口唇閉鎖力がBMI、FFMI、およびSMIと正相関している」とまとめ、高齢者だけでなく中年期成人においても口腔機能と栄養状態に関連があると結論付け、「舌圧と口唇閉鎖力を測定することで、BMIやFFMI、SMIなどで把握される栄養状態を推定可能と考えられる」と述べています。

口の中の健康状態が悪いと認知症医療費がかさむ――三重県での調査

歯の本数や歯周病の重症度が認知症の医療費と有意に関連することが、日本人対象の研究から明らかになりました。愛知学院大学歯学部口腔衛生学講座の嶋﨑義浩氏らが、三重県在住高齢者の医療データを解析した結果であり、詳細は「American Journal of Alzheimer’s Disease and Other Dementias」に2021年2月25日掲載されました。
認知症は世界的に増加しており、医療・福祉財政の負担が問題になりつつある一方、口腔健康状態が認知症リスクと関連することが、近年注目されています。嶋﨑氏らは、三重県の後期高齢者医療制度のデータを用いて、三重県歯科医師会が行った歯科検診の結果と認知症医療費との関連を検討しました。2014年度に歯科検診を受診した人は4,984人で、そのうち同年度内に認知症治療を受けず、かつ2019年3月まで生存していた4,275人を解析対象としました。

認知症の人の医療費について、まず残っている歯の本数で比較すると、20本以上ある人に対して、9本以下の人の認知症医療費比は3.79倍であり、有意に高額でした(P=0.006)。また、CPIが0~2(歯周病なし~歯科検診時の歯肉出血または歯石のみ)の人に対して、CPIが4(6 mm以上の歯周ポケット)の人の医療費比は4.04倍高額でした(P=0.009)。

著者らは、本研究の解析対象が歯科検診受診者であるため、口腔衛生への意識が高い人が多いという選択バイアスが存在する可能性があるとしています。実際に本研究の参加者の口腔衛生状態は、同年齢の一般住民に比較して良好だったということです。また、BMIが本人の申告によるため正確とは言えないことや、他の交絡因子の影響が調整できていないことも、解釈上の注意点としています。これらの限界点を挙げた上で、著者らは「口腔健康状態は、認知症の医療費と有意に関連している。歯の喪失を防ぎ、健康な歯周状態を維持することは、医療費の抑制につながる可能性がある」と結論付けています。

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