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2021年2月号記事 vol.201

腰痛治療の新ガイドライン ―まずは薬物療法以外を

WHR202103寒い日が続き、自宅や屋内で過ごす時間が長くなっている方も多いのではないでしょうか。このような時に、気になるのが運動不足と、座りっぱなしによる腰痛。今回は、腰痛について国内外からの研究報告をご紹介します。

米国内科学会(ACP)が発行した新たなガイドラインによると、腰痛患者にはまず薬剤を用いない治療法を試すことが推奨されるということです。今回の勧告は、「Annals of Internal Medicine」に2017年2月14日オンライン掲載されましたが、この勧告は、腰痛治療に関するさまざまな研究のレビューに基づくものでした。ACP代表のNitin Damle氏によると、「神経根性(radicular)」腰痛は椎間板ヘルニアなどによる脊髄神経の圧迫に起因するもので、脚の放散痛や筋力低下、しびれなどの症状を伴います。一方で、明確な原因のない短期的な「非特異的」腰痛の多くは、加温や行動改善などの簡単な方法で改善するということです。

ガイドラインでは、一般に12週間未満の腰痛の場合は、温熱シート、マッサージ、鍼治療、脊椎徒手整復により効果が得られる可能性があるとしています。12週間以上続く場合でも、運動療法、鍼治療のほか、ヨガ、太極拳、マインドフルネスによるストレス軽減、ガイデッド・リラクゼーションなどの「心身」療法、認知行動療法が有効な場合があると指摘しています。また、特に神経根性腰痛については治療効果を示すエビデンスはほとんどありませんでしたが、運動療法には有用性が認められたと報告されています。

慢性腰痛に運動療法の個別化が有効

また、慢性の非特異的腰痛に対する運動療法は、患者の状態に応じ個別化することで、より大きな症状改善を期待できることが、米ワシントン大学のLinda Van Dillen氏らが行ったランダム化比較試験の結果で明らかになりました。詳細は「JAMA Neurology」に2020年12月28日掲載されました。

多くの人のQOL(生活の質)に多大な影響を及ぼす腰痛ですが、それに対する効果的な標準治療は確立されておらず、一定の効果があるとされる運動療法についても、どのようなタイプの運動が最も良いのか分かっていません。そこで同氏らは、慢性腰痛の中でも明らかな原因を特定できない「非特異的腰痛」に焦点を当て、運動療法を個別化することが症状の改善につながるかを検討ましした。

この研究では、18~60歳の非特異的腰痛患者154人を対象とし、全体を二分し、1群は、腰痛に対し筋力と柔軟性の維持・改善を目的として一般的に行われている運動療法(strength and flexibility exercise;SFE)を行う群とし、他の1群は、患者の姿勢や動きを評価して痛みの少ない動作を特定し指導するという、個別化した運動技能訓練(motor skill training;MST)を行う群としました。その結果、MST群の患者はケアに対する満足度が高く、鎮痛薬の使用頻度も減少し、日常の身体活動を回避することも少なくなっていました。これらの結果についてVan Dillen氏は、「MSTが効果的な治療であり、慢性腰痛患者に対して生活機能の短期的および長期的な改善をもたらすことを示唆している」としています。この研究報告をレビューした米オークランド大学のDaniel Park氏は、「かつて腰痛に対しては安静が重要だと考えられていた。しかし現在は、安静が良いのは急性期の短期間のみであり、安静期間が長すぎるとかえって症状が悪化する可能性がある」と解説しています。

肩こりと腰痛が両方ある人はQOLがより低下している――弘前大

また、腰痛に肩こりを併存している場合、QOLがより大きく低下していることをデータとして明らかにした研究結果が報告されました。弘前大学大学院医学研究科整形外科の熊谷玄太郎氏らの研究によるもので、詳細は「BMC Musculoskeletal Disorders」に1月5日掲載されました。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」から、日本人の有訴者率(自覚症状を訴える人の割合)の高い症状の上位2位は、肩こりと腰痛の二つであることが分かっています。熊谷氏らが行った研究では、過去3カ月間の肩こりや腰痛の症状の有無を質問したところ、両者いずれもない人が31.8%、肩こりのみが22.5%、腰痛のみが16.2%であり、両者が併存している人が29.4%と約3割を占めていました

男性で肩こりと腰痛が併存している群では、精神的QOL(MCSスコア)が他の全ての群(肩こりのみの群、腰痛のみの群、症状のない群)よりも有意に低いことが明らかになりました。さらに女性のMCSスコアは併存群が最も低く、腰痛のみの群や症状のない群との間に顕著な差が存在していました。この結果について著者らは、「肩こりと腰痛が併存する場合、身体的・精神的QOLへの影響がより大きいと考えられる」とした上で、「この知見は、非特異的な肩こり・腰痛の予防や、QOL低下を来す疾患の鑑別に援用できるのではないか」と述べています。

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