研究者であるHenamayeeらは、タデ科の植物であるダイオウ Rheum rhabarbarum の葉や、多くのアロエ品種に含有される天然由来アントラキノンであるレイン (rhein) の持つ抗がん作用についてまとめています。近年の研究から、レインは複数の標的に対して細胞毒性を発揮する化合物であると推定されています。レインの備える抗がん作用は、乳房、頸部、結腸、脳腫瘍、白血病、肝臓、肺、鼻咽頭、卵巣、膵臓および口腔などのさまざまな種類のがんにおいて、in vivoまたはin vitroレベルで実証されてきました。
がん細胞は、その周囲に免疫応答を抑制させる微小環境を形成して、自己免疫による排除から逃れようとします。抗がん性の細胞毒性を持つ物質は、直接的または間接的な作用を介して、微小環境の免疫抑制を正常に戻すことができます。Ooiらは、米ぬかから取り出した水溶性食物繊維であるヘミセルロースBに、シイタケ菌から得た酵素を作用させることで得られるアラビノキシラン化合物 (RBAC) の健康促進効果について、臨床事例を交えてレビューしています。RBACは、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害能力を活性化させ、貪食細胞の機能を強化し、樹状細胞の成熟と活性化を誘導することができる、抗がん性ニュートラシューティカルズでもあります。さらに、RBACの持つ免疫調節作用、抗炎症作用、抗酸化作用および抗血管新生作用といった種々の特性は、がん以外の幅広い用途にも応用可能です。
チモール (thymol) は、植物のタイムから抽出した精油に含まれるフェノール化合物です。Günes-Bayirらは、健常細胞と胃の腺癌細胞を用いて、チモールの細胞毒性、遺伝子毒性および抗酸化作用を評価しました。その結果、低濃度のチモールは腺癌細胞に対して毒性を示す一方で、健常細胞に対しては抗酸化作用により細胞の保護に働くことがin vitroにおいて示されました。このような、細胞の種類の違いにより同じ用量であっても反応性が変化してくるという特性 (ホルミシス効果) を活かせば、チモールは抗がん剤としての応用もできるかもしれません。
チャールズ・スタート大学, School of Biomedical Sciences, Australia
Sok Cheon Pak, Ph.D.氏
1992年クレムソン大学 (米国) にて博士号 (生理学) 取得。その後イリノイ大学医学部 (米国)、ドンシン大学 (韓国) 准教授、New Zealand College of Oriental Medicine (ニュージーランド) 学部長を経て、2007年からはチャールズ・スタート大学健康科学部 (補完医療) 准教授/プログラムリーダーを務める。