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こどもと母のメンタルヘルス

近年、職場においてもストレスチェック制度が導入されるなど、メンタルヘルスケアの大切さが注目を集めています。しかしこれと同時に、働く人たちだけでなく、家庭においても家事や育児をめぐる様々なストレスもケアが必要だと言えるでしょう。特に妊産婦は体調の変化とともに様々な不安やストレスを抱えており、周囲の理解とサポートが欠かせません。今回は、2019年11月29日に実施された東京都医学総合研究所・都民講座「子どもと母のメンタルヘルス:妊産婦のこころを知り・支える」/尾崎紀夫氏(名古屋大学・抱いたクイン医学系研究所、精神医学・親と子供の診療学分野 脳と心の研究センターセンター長、附属病院 ゲノム医療センター長)に基づいて、妊産婦のメンタルケアについてお話します。

産後うつ病対策の重要性

東京都監察医務院などの調査によると、2005年~2014年の10年間で、23区内において自殺で亡くなった妊産婦が63人に上ることが分かりました。出産数に占める割合は10万人あたり8.5人となりますが、出血などによる妊産婦死亡率の約2倍に上り、妊娠・出産期の死因として自殺が最も多いことになります。10万人あたりの妊産婦自死数を比較すると、スウェーデンでは3.7名、英国では2名であるのに対して、日本では8.7名と非常に高い数値となっており、早急な対策が必要であることが分かります。

産後のうつ病で生じる悪循環

産後はホルモンの変化でストレスに耐える脳の力が低下しますが、新生児の世話などで睡眠がとれず、脳機能の回復が不十分な状態が続きます。この段階で周囲への相談や周囲からのサポートが不十分だと脳機能が変化し、ものの見方が否定的になり、「母がすべてをやらねば」と思い込んで一人で抱え込んでしまったり、「子育てはとても大変」と心の中でストレスになる出来事が増えていってしまう、という悪循環が生まれがちです。

産後うつを早期に見つける

EPDS(日本語版エジンバラ産後うつ病自己評価表)を使用して産後1ヵ月に不安・抑うつ・快感喪失の3因子構造を確認したところ、産後にうつ病を発症する女性は、下の左図に見られるように妊娠前期に不安を呈していることが明らかになっています。そのため、産後うつを早期に発見してケアすることが重要だと考えられます。

EPDS

 

三因子別比較

(講習会資料より)

周産期に対する理解とサポート

また、妊娠中のサポート人数が多いと産後の抑うつを軽減する保護的効果があることから、妊娠中に抑うつ傾向があれば、サポート人数を増やすことも大切です。周産期においては、精神医学的介入・支援、母親教室における心理教育、新生児に対する発達のフォローアップなど、妊娠中から出産後まで、継続して心理的ケアを行える体制づくり、そして周囲の人たちの理解とサポートが必要だと言えるでしょう。