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健康長寿社会に向けた栄養学の取り組み

高齢化社会において、栄養への関心はますます高まっています。今回は、国立健康・栄養研究所が実施したイベント「健栄研フェスタ」(2021年3月)での講演・講義を3回にわたってご紹介します。今回は、記念講演「健康長寿社会に向けた栄養学の取り組み」(公益社団法人日本栄養士会 代表理事・会長 中村丁次氏)についてお話しします。

栄養学の誕生と歴史

栄養学とは、「人は食べないと死ぬ。食べ物に生命の元があるに違いない」と考えられ、このことを科学的に解明することを目的として発展してきました。1944年に戦時中の米国で、健康人を低栄養にすると、どのような変化が起こるのか?という実験(ミネソタ飢餓実験)が実施され、栄養が不足すると生理機能の低下(むくみ、疲労等)だけでなく、精神機能の低下(集中力や判断力の低下、気分障害、抑うつなど)も見られることが明らかになりました。
戦後、日本でも低栄養が大きな問題となりましたが、戦後の栄養改善は、給食指導を基盤として進められました。栄養士を学校に配置して給食の栄養を改善し、一方で家庭に向けて「給食だより」を配布しました。この「給食だより」を通して、家庭でも「栄養」について考えることを啓発し、家庭の食卓での栄養改善が図られました。これほど短期間で、平等に栄養状態を改善した栄養政策は他には見られないと、中村氏は指摘しています。

現代の栄養学

このように経済復興や給食の普及によって栄養状態は改善されましたが、今度は食生活の西欧化によって肥満と生活習慣病が増加し、日本の栄養学は新たな段階に入ったと言えるでしょう。そこで、「健康日本21」政策と保健指導が推進され、肥満と生活習慣病にも次第にブレーキがかかり始めました。
次に、近年新たに栄養学の課題となったのは、高齢化社会です。高齢化社会によって人々の寿命が延伸すると、それに従って、「健康な高齢化」を促進し、健康寿命を延ばすための栄養を研究することが必要になります。現代の栄養学は、このフェーズにあると考えられます。

「腹8分目」は高齢者には高リスク?

よく「腹8 分目」と言いますが、実はカロリー制限は小児と高齢者には効果がなく、年齢層によってエネルギー摂取量の目安をギアチェンジする必要があることが、近年の研究で明らかになってきました。いわゆる「腹8分目」、つまりカロリー制限は、成人期の肥満症予防には有効ですが、これでは小児の場合は栄養不足、高齢者では骨密度が低下してフレイルになるリスクが高まります。米国のウィスコンシン大学と国立加齢研究所の共同報告では、健康寿命の延伸のためには、成長期と高齢期はしっかり食べて低栄養対策、中高年期には過栄養対策が必要になることが指摘されています。ただし、いつの時点からギアチェンジをする必要があるか、ということについては栄養状態、生活様式、体質など様々な要因を検討する必要があるため、個別の対策が必要になると中村氏は指摘します。

2021年7月号メタボ対策からフレイル対策

講習会資料より