前回はメタボリックシンドロームとは何かについてお話しました。生活習慣によってもたらされる肥満そして高脂血症、糖尿病、高血圧は互いに重なりあって生じることが多い疾患です。
ちなみに、労働者の健診データをもとにした解析では、肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病のうち3つ以上を持つ人は、1つも持たない人に比べて約30倍も冠動脈疾患(心臓を栄養する血管の病気)になりやすいそうです。
さて、このようなメタボリックシンドロームが生じる原因は何でしょうか?それは、内臓脂肪の蓄積を促す運動不足と過栄養なのです。
内臓脂肪が蓄積した人の生活習慣を調査した報告があります。まず食生活です。男女ともに、「食事は満足するまで摂る」という特徴がありました。また男性では、「間食をよくする」、女性では、「料理に砂糖をよく使う」という特徴もありました。
すなわち、1日の食事量が多いこと、間食や甘いものを摂ることでカロリーが多くなることを示しています。
次に生活習慣です。男性では「喫煙歴がある人」、「交通手段として自転車を多く利用する人」に多いことがわかりました。すなわち、身体活動量の低下、運動不足および喫煙が関与していることが分かりました。
ちなみに、わが国の男性成人を対象とした研究では、喫煙本数に比例してメタボリックシンドロームが発生しやすくなるようで、1日31本以上の喫煙者では非喫煙者に比べて1.6倍の発生頻度になるそうです。
以上のことから、カロリーの摂りすぎに注意して、高脂肪食や間食を控えることが重要です。
一般に、高脂肪食は動脈硬化を促進して血管の機能(拡張や収縮)を阻害することが知られています。さらに、日系ブラジル人を対象とした調査研究でも、赤みの肉を多く食べる人は、あまり食べない人に比べてメタボリックシンドロームになる危険性が5.4倍にもなるそうです。
次に、喫煙習慣がある人は直ちに禁煙することが重要です。
近年は、公共の場における禁煙化が推進され、受動喫煙の予防にも力が注がれています。公共の場が禁煙化されることで、その地域の心臓病発生率が有意に低下したという報告があります。自らだけでなく、人の健康にも影響を与えないように配慮することも重要でしょう。
滋賀医科大学 教授
一杉 正仁(ひとすぎ まさひと)氏
1994年、東京慈恵会医大卒。川崎市立川崎病院勤務を経て東京慈恵会医大大学院修了、同大助手、獨協医科大学法医学講座准教授を経て、現職。国立大学法人滋賀医科大学医学部社会医学講座 法医学部門教授。医師、医学博士。日本法医学会法医認定医。日本法医学会評議員。
専門は血栓症突然死の病態解析、バイオレオロジー、予防医学。国際交通医学会東アジア地区担当理事、日本バイオレオロジー学会理事、日本交通科学会理事、日本医学英語教育学会副理事長などを務める。2010年、International Health Professional of the Year, 2010 受賞。いわゆるエコノミークラス症候群の原因究明、納豆による血栓症予防についての研究で広く知られており、代表著書に「ナットウプロテアーゼ」などがある。
・掲載6 長生きするための血流改善
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・掲載3 江戸時代の食生活を学ぶ
・掲載2 健康になると交通事故死傷者が減る
・掲載1 こんな時に起きる血栓症
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・掲載4 メタボリックシンドロームを予防するために
・掲載3 メタボリックシンドロームから血栓症へ
・掲載1 メタボリックシンドロームが注目された背景
・掲載6 健康食品と上手につきあう
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