前回は、国民の多くが健康食品を利用する目的を簡単にお話ししました。健康であると考えられている人の中には、さらに自分の健康状態を高めたい人、あるいは半ば病気を患いかけている人がいます。
これらの人は医療機関で病気と診断されていませんから、医薬品を処方されることはありません。したがって、自分の健康状態をより一層高めるために健康食品などの利用に頼るのです。
また、病気と診断され、医薬品が処方されている人でも、その薬の量を軽減するために食生活の改善が必要とされます。その際、ある種の健康食品が効果的なことがあります。
皆さんは病気にかかると医療機関を受診し、必要に応じて内服薬が処方されます。しかし、内服薬の飲み忘れなどによって、本来期待されている治療効果が発揮されないことがあるのです。
それでは実際にどの程度、服薬が正確に行われていないのでしょうか。国内外の複数の調査によると、糖尿病患者さんの38.0%、高血圧患者さんの20.4%で、きちんと服薬がされていないことが分かりました。そして、処方された薬剤数が多くなるほど、服薬状況は悪くなるそうです。
せっかくの内服薬を処方されても利用されないわけですから、無駄があり、そして医療費の増大にも結びつきます。そのためにも処方薬剤を減らすことが重要です。すなわち、食生活習慣の改善や健康食品の利用などが望まれます。ですから健康食品は必要なのです。
かつては健康食品と聞くと、何か信用できないというイメージを持つ人が多かったかもしれません。しかし、自分の体は自分で守るという未病や予防医学的な見地からも重要な役割を果たしているのです。
前回までにお話したように、健康食品(サプリメント)の使用経験がある人は7割を超えています。ですから、病気を患って医療機関を受診する患者さんのなかにも、すでに健康食品を利用している人が多いのです。もちろん、医師が処方する内服薬と健康食品の効果が拮抗する、あるいは作用が増強されることもあります。
しかし、エビデンス(科学的根拠)が確固たる健康食品は、日頃の食生活で不足している栄養素を補い、生活習慣病の一次予防につながることや、薬に似た効果を期待されるというメリットが多々あります。
ですから、最近の医師は健康食品を一方的に忌み嫌うことはしないでしょう。しかし、2005年に東京で行われたアンケートによると、74.8%の患者さんが、医師から健康食品(サプリメント)利用の有無を確認されたことがないそうです。
もちろん、医師はこれらのことに目を配らなければなりません。しかし皆さんも、健康食品(サプリメント)を利用している場合は、医療機関を受診する時に、その旨を医師に伝えて下さい。皆さんの健康を守るうえで重要な情報なのです。
滋賀医科大学 教授
一杉 正仁(ひとすぎ まさひと)氏
1994年、東京慈恵会医大卒。川崎市立川崎病院勤務を経て東京慈恵会医大大学院修了、同大助手、獨協医科大学法医学講座准教授を経て、現職。国立大学法人滋賀医科大学医学部社会医学講座 法医学部門教授。医師、医学博士。日本法医学会法医認定医。日本法医学会評議員。
専門は血栓症突然死の病態解析、バイオレオロジー、予防医学。国際交通医学会東アジア地区担当理事、日本バイオレオロジー学会理事、日本交通科学会理事、日本医学英語教育学会副理事長などを務める。2010年、International Health Professional of the Year, 2010 受賞。いわゆるエコノミークラス症候群の原因究明、納豆による血栓症予防についての研究で広く知られており、代表著書に「ナットウプロテアーゼ」などがある。
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