健康食品は誰もが簡単に入手できるようになった故、その市場規模は1兆円をこえ、2010年には3.2兆円に達すると言われています。
前回までにご紹介した特定保健用食品(トクホ)の売上額は2001年に約4120億円であり、4年前(1997年)の額の3倍以上にも膨らんでいます。
ここで、サプリメントについての調査結果をご紹介します。
サプリメントという言葉は、しばしば健康食品と同義語で用いられていますが、調査ではビタミンやミネラル類といった、いわゆる低価格の健康食品を主に指して使われているようです。
まず世界の動向です。1997年から2004年の間に世界の主要各国におけるサプリメントの消費動向を調査した結果をご紹介します。
サプリメントが最も多く売られていたのは米国で、その額は145億ドル(2004年)でした。そして日本が続き、その額は74億ドルでした。この2ヶ国が圧倒的に多く、世界のサプリメント消費の大部分をしめていました。
しかし、人口一人当たりの消費額を調べると、日本が58.2ドルと最も多く、米国の49.1ドル、台湾の29.1ドルを抜いてトップなのです。世界で最もサプリメントを愛用しているのは日本人と言えそうです。
それでは日本の国内ではどのような傾向があるのでしょうか。
2005年の12月にインターネットを介して約15000人を対象にしたアンケート調査が行われました。その結果、サプリメントの利用経験がある人は、全体の76.0%をしめ、現在もサプリメントを使用中の人は45.3%でした。
利用経験者を対象に、どのような目的で使用したかを尋ねたところ、「健康維持」が70.7%と圧倒的に多いことがわかりました。さらにサプリメントを選択するときに重視することとして、「効能・作用」が最も多く、64.9%をしめていました。
このように、日本の約半数の人が健康を第一に考え、そして、効能や作用が十分であるサプリメントを購入しようとしているのです。表現をかえると、多少価格が張っても、やはり健康のためには良いものを選ぼうとする意識があるようです。
一般消費者の健康に対する意識や関心が高まったことで、健康食品の市場規模も拡大してきました。健康食品の購入経路としては薬局(ドラッグストア)と通信販売(インターネット販売を含む)がほとんどをしめていました。
皆さんも健康食品に関心を持たれて、さまざまな知識を得られていると思います。どうでしょうか、効能が科学的に証明された商品を正確に選べていますか?インターネットで気軽に買うことができる、ドラッグストアで大々的に宣伝されている、見た目がきれい、などの理由で手にされていませんか?
健康食品市場が急速に拡大した背景には、国民の健康志向を利用して素材ありきや話題性ありきの発想で投入された商品もあるはずです。前回お話したように、科学的エビデンスが確固たる商品を選んで下さい。
滋賀医科大学 教授
一杉 正仁(ひとすぎ まさひと)氏
1994年、東京慈恵会医大卒。川崎市立川崎病院勤務を経て東京慈恵会医大大学院修了、同大助手、獨協医科大学法医学講座准教授を経て、現職。国立大学法人滋賀医科大学医学部社会医学講座 法医学部門教授。医師、医学博士。日本法医学会法医認定医。日本法医学会評議員。
専門は血栓症突然死の病態解析、バイオレオロジー、予防医学。国際交通医学会東アジア地区担当理事、日本バイオレオロジー学会理事、日本交通科学会理事、日本医学英語教育学会副理事長などを務める。2010年、International Health Professional of the Year, 2010 受賞。いわゆるエコノミークラス症候群の原因究明、納豆による血栓症予防についての研究で広く知られており、代表著書に「ナットウプロテアーゼ」などがある。
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