今回からは健康食品・サプリメントに関する話題を提供します。病気を予防し、そして健康寿命を伸ばすうえで有用な情報と思いますので、大いに活用して下さい。
まずは、言葉の定義をお話します。サプリメントという言葉がありますが、日常の食品で不足する栄養素を補うものという意味で使われています。
しかし、わが国ではサプリメントや健康食品という言葉についてきちんと法律で定義されていないのです。ちなみに米国では1994年にサプリメントに関する法律(Dietary Supplement Health and Education Act)が制定され、サプリメントは食品と医薬品の中間に位置することが記されています。
わが国では2001年まで、法律によって医薬品か食品かの区別しかされていませんでした。まず薬品ですが、薬事法によると、1)日本薬局方に収められている物、2)人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物、3)人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物をさします。
次に食品ですが、食品衛生法によってすべての飲食物のうち、薬事法で規定する医薬品及び医薬部外品を除くもの、と定められています。このように、まず医薬品か食品かの区別しかされていませんでした。
諸外国での普及に加え、国民の健康志向が強くなり、多くの情報が容易に得られるようになったことから、健康食品が身近な存在になりました、健康食品とは、医薬品と食品の両者の性格をもち、かつ原材料が食品であるものです。
さて、前述の薬事法に戻りますが、薬品では当然のことながら効能や効果を表示できますが、食品ではこれを表示できないのです。したがって、健康食品は、食品である以上、「○○に効果的」などと表示することは禁止されており、これにそむくと薬事法違反になりました。
これに対して厚生労働省は2001年に保健機能食品制度を創設し、健康食品の中でも一部を保健機能食品と定め、一定の機能や効果を表示できるように定めました。
保健機能食品は大きく特定保健用食品と栄養機能食品の2つに大別されます。特定保健用食品は、トクホと呼ばれるもので、身体の生理学的機能や生物学的活動に影響を与える成分を含み、かつ、その根拠によって健康の増進などが期待できる旨を表示できる食品です。個別に国の審査を受けて許可を得る必要があります。
栄養機能食品は身体の健全な成長・発展・健康の維持に必要なミネラルやビタミンの補給を目的とし、栄養成分の機能を表示できる食品です。現在、ビタミン12種類とミネラル5種類のみが該当する成分であり、規格基準に適合していれば許可や届出は不要なのです。
以上が国で定められている定義です。健康食品のすべてが、このような保健機能食品というわけではありません。このほかにも、疾病の予防や健康増進に有用な健康食品が数多くあるのです。
滋賀医科大学 教授
一杉 正仁(ひとすぎ まさひと)氏
1994年、東京慈恵会医大卒。川崎市立川崎病院勤務を経て東京慈恵会医大大学院修了、同大助手、獨協医科大学法医学講座准教授を経て、現職。国立大学法人滋賀医科大学医学部社会医学講座 法医学部門教授。医師、医学博士。日本法医学会法医認定医。日本法医学会評議員。
専門は血栓症突然死の病態解析、バイオレオロジー、予防医学。国際交通医学会東アジア地区担当理事、日本バイオレオロジー学会理事、日本交通科学会理事、日本医学英語教育学会副理事長などを務める。2010年、International Health Professional of the Year, 2010 受賞。いわゆるエコノミークラス症候群の原因究明、納豆による血栓症予防についての研究で広く知られており、代表著書に「ナットウプロテアーゼ」などがある。
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