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ドクターから健康アドバイス

病理医からみた一人ひとりのがん戦略

掲載1

はじめに

がんは恐ろしい病気ではない

「がんは遺伝するのでしょう?」「うちはがん家系だから心配です」、一方で「がんは生活習慣病ですって?」「がんはライフスタイルによって予防できるんですか?」。
これらの質問はわたしがしばしば耳にする問いあわせです。大人のがんについて前の二つの常識は証拠が乏しく正しいとはいえません。後の二つはそのとおりです。

がんは恐ろしいという常識があります。がんは必ずしも恐ろしい病気ではなく、多くの大人のがんは予防できます。早期発見の機会さえあれば早期治療によるがんの治癒が可能となっています。

がんの潜伏期の長短は、食事内容や生活習慣と密接に関係

つまり、大人のがんは多くの場合10年以上の長い潜伏期のあとに目に見えるような大きさになります。潜伏期を短くするか、長くするかはひとりひとりの食事内容や生活習慣といったライフスタイルならびにおのおのの体質と密接にかかわっています。極端にいえば潜伏期は半永久的にひきのばせるでしょう。

がんはいったん見えるくらいの大きさになると加速度的に大きくなります。身体のほかの部分にひろがり、転移という厄介な状態となります。潜伏期の長さにくらべ、末期がんの状態になるまで数年しかかかりません。

こうした考え方はここ10年くらいの医学研究から明らかになってきました。ですから、現在がんのない熟年の方々は潜伏期にあるとお考えになると、限りなく自分の体がいとおしくなり、予防ができるものならどうしたらいいのか知りたくなるというものです。かくいう私はまさにがん年齢真っ只中の61歳であり、ライフスタイルや料理に好奇心を持ってがん予防に挑戦しています。

心と身体のかかわりを重視したがん戦略

食べ物の中の何かについては、植物栄養素(野菜、果物)を中心にあとでじっくり説明していきます。これらは大変強力な味方で、このことをお伝えすることがこのコラムの第一の主旨です。
食べ物として控えるべきものはあまりなく、むしろほどほどに食べましょうというものばかりです。タバコは残念ながら控える第一のものといわざるをえません。

一方、不運にも進行して見つかったがんに対しては今までのがん治療がすべてではありません。がん免疫療法や補完代替医療の可能性が詳しく研究されています。そして心と身体のかかわりを重視した生活全体そして人間丸ごとを対象とするひとりひとりのがん戦略があると考えます。そのために現代医療をおぎなう統合的な医療の考え方や実際についてお話しすることがこのコラムのもうひとつの主旨です。

約28年間の病院勤務と700例に及ぶ病理解剖の経験から、現代医療に疑問

ところで、今から10年前といえば、私の信奉していたがん治療の常識は手術、放射線照射、抗がん剤でした。それはちょうど都内の一総合病院の病理医であり臨床免疫医をしていた頃にあたります。まさに現代医療真っ只中の状態でした。

その病院で約28年間の勤務中に、治療の甲斐なく亡くなられた約700例に及ぶ病理解剖にたずさわった経験から、実際行われたがん治療は本当に効いたのだろうかと問いなおして悩むことが多かった時期でした。

またこの頃は、不覚にも「がん年齢」「生活習慣病」「成人病」といったことばの深い意味を理解していませんでした。これらの中にも潜伏期という内容が潜んでいます。昨今では、漢方の考え方の未病という言葉でおきかえようという考え方もあります。

的確な科学情報を横断的に集め、比較分析し、分かりやすく解説

人は身近な情報に踊らされます。医者とて同様で、医学という専門性の中に埋没してしまいがちです。医者の前にひとりの人間として専門性という垣根を取り払いながら、的確な科学情報を横断的に集めていく作業は日々の地道な作業となります。

情報の氾濫している現代メデイアにあって普遍的な考え方をつかみとることは至難なことです。それゆえ専門性を越えて目的意識を持って集めた情報を比較分析し、分かりやすく解説したがん戦略の情報は乏しいように思っています。

このコラムがこうした情報の発信源となることを願っています。私の病理学的な経験をバックグラウンドとして現代医療の長所、短所を分析して、それを補うにはどのようにしたらよいか考えていきたいと思います。そしてがん予防の手引きを具体的に示すように工夫していきます。皆様からのご意見やご批判をいただきながら、情報発信できますれば幸いです。

プロフィール
遠藤 雄三(えんどう ゆうぞう)氏

浜松医科大学(第一病理)

遠藤 雄三(えんどう ゆうぞう)

昭和44年(1969年)東京大学医学部卒。虎の門病院免疫部長、病理、細菌検査部長兼任後退職。カナダ・マクマスター大学健康科学部病理・分子医学部門客員教授となる。現在、浜松医科大学第一病理非常勤講師、宮崎県都城市医療法人八日会病理顧問、看護学校顧問。免疫学・病理学・分子医学の立場からがん・炎症の研究を進め、現在に至る。

<主な研究課題> 生活習慣病予防にかかわる食物、サプリメント、生活習慣病と公衆衛生、IgA腎症と粘膜免疫とのかかわり、人体病理学、臨床免疫学、実験病理学

バックナンバー

感染症と免疫シリーズ

・掲載6 感染症予防には手洗い、うがい、そして免疫をケアしよう

・掲載5 細菌感染と抗生物質:抗ウィルス薬は細菌には効かない

・掲載4 ウィルス感染症の治療と予防:抗ウィルス薬、血清療法、免疫

・掲載3 風邪、天然痘とSARS、MERSそして変異型コロナウィルス

・掲載2 花粉か、細菌か、ウィルスか、自己とのちがいとは?

・掲載1 ウィルス感染と免疫システム

病理専門医からみた健康戦略シリーズ[2]

・掲載22 自己とは?非自己とは?(22)過敏性腸症候群/食物アレルギー

・掲載21 自己とは?非自己とは?(21) 大腸と腸内細菌

・掲載20 自己とは?非自己とは?(20) Bリンパ球/IgA

・掲載19 自己とは?非自己とは?(19) パイエル板

・掲載18 自己とは?非自己とは?(18) 消化管の蠕動(ぜんどう)運動

・掲載17 自己とは?非自己とは?(17)粘膜免疫

・掲載16 自己とは?非自己とは?(16)腸管免疫

・掲載15 自己とは?非自己とは?(15)免疫と消化管

・掲載14 自己とは?非自己とは?(14)ウィルスと自己

・掲載13 自己とは?非自己とは?(13)妊娠とABO式血液型不適合

・掲載12 自己とは?非自己とは?(12)移植

・掲載11 自己とは?非自己とは?(11)輸血と免疫

・掲載10 自己とは?非自己とは?(10)Ⅲ型アレルギー/自己免疫疾患

・掲載9 自己とは?非自己とは?(9)Ⅱ型アレルギー/血液型

・掲載8 自己とは?非自己とは?(8)抗生物質の発見/一型アレルギー/免疫グロブリン

・掲載7 自己とは?非自己とは?(7)外部からの非自己②

・掲載6 自己とは?非自己とは?(6)外部からの非自己①

・掲載5 自己とは?非自己とは?(5)急性炎症:日焼けと免疫反応

・掲載4 自己とは?非自己とは?(4)炎症

・掲載3 自己とは?非自己とは?(3)アレルギー

・掲載2 自己とは?非自己とは?(2)自己の確立②

・掲載1 自己とは?非自己とは?(1)自己の確立①

病理専門医からみた健康戦略シリーズ[1]

・掲載6 からだの防御システム(6)特異的免疫細胞たち:リンパ球

・掲載5 からだの防御システム(5)免疫細胞たち:白血球

・掲載4 からだの防御システム(4)免疫ホメオスタシス/感染症と炎症

・掲載3 からだの防御システム(3)「食-医同源」

・掲載2 からだの防御システム(2)新型インフルエンザウィルス

・掲載1 からだの防御システム(1)はじめに:「病気」、「病態」そして「病 名」

病理医からみた一人ひとりのがん戦略

・掲載21 頭頚部がん(2)

・掲載20 頭頚部がん(1)

・掲載19 多発性骨髄腫(3)

・掲載18 多発性骨髄腫(2)

・掲載17 多発性骨髄腫(1)

・掲載16 おとなの進行がんの治療戦略(2)

・掲載15 おとなの進行がんの治療戦略(1)

・掲載14 子宮がん(2)子宮内膜がん

・掲載13 子宮がん(1)

・掲載12 肝細胞がんに対する予防戦略 3)ウイルス排除と抗炎症対策

・掲載11 肝細胞がんに対する予防戦略 2)肝硬変と慢性炎症

・掲載10 肝細胞がんに対する予防戦略 1)肝細胞がんのおこり方

・掲載9 前立腺がんに対する戦略

・掲載8 乳がんに対する戦略

・掲載7 肺がんの予防戦略

・掲載6 環境要因による胃がん予防

・掲載5 大腸がんに対する防衛戦略

・掲載4 生活習慣病としてのおとなのがん

・掲載3 抗生物質から抗がん剤開発へ

・掲載2 現代医学と病理学

・掲載1 はじめに

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