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2022.11.22

フレイル予防習慣を身につけて、快適な老後を手に入れよう②

健康豆知識2022年11-1フレイル(虚弱)は様々な疾患や合併症の入り口。できるだけ早い段階から、食事や栄養素に注意を払うことが重要です。毎日の食事の中で、エネルギー摂取量を意識すること、肉や魚などタンパク質を多く含むメニューを取り入れることがフレイル予防の近道。さらに「様々な食品を偏りなく食べること」を意識するのも重要です。前回に引き続き東京都健康長寿医療センターの第161回老年学・老年医学公開講座「健康長寿の秘訣!フレイル予防を学びましょう!」より本川佳子研究員の講演をご紹介します。

偏った食事はフレイルの元

フレイルの予防には、様々な食品を偏りなく食べることが大切です。東京都健康長寿医療センターでは、肉類、魚介類、緑黄色野菜、果物類、油脂類など10項目からなる「食品摂取多様性スコア」(図1)と、フレイル発症リスクの関係性について年に1度、比較調査しています。この「食品摂取多様性スコア」は食べた品目ごとに1点が加算されるもので、食べた量は加味されません。
最新の調査によると、健康な方の「食品摂取多様性スコア」は平均4.5点。プレフレイルの方は4.3点となり、大きな差は見られませんでした。ただ、フレイルを発症している方になると平均3.9点。統計学的にも有意に低い数値が示されています。また、食品別では肉類と緑黄色野菜の摂取量が著しく不足している傾向にあります。

健康豆知識2022年11-2

図1 東京都健康長寿医療センター研究所より引用
https://www.tmghig.jp/research/topics/201502/

 

「食品摂取多様性スコア」の高い方は、炭水化物、穀物エネルギーに比べて、タンパク質や脂質エネルギー、ミネラル類の摂取比率が高く、主食と主菜、副菜を組み合わせたバランスの良い食事をとっています。一方で、スコアの低い方は、炭水化物、穀物エネルギーの摂取比率が高く、タンパク質や脂質が不足しがちなことが分かっており、パンだけ、麺だけというような偏った食事をされていることが考えられます。
私達は食品から摂取した栄養素を、身体の中の複雑な代謝系にかけて、身体を動かすエネルギーに変えたり、身体の調子を整えたりしています。健康な人は、様々な食品から様々な栄養素を摂取することで、身体の中で抗酸化作用が働き、フレイルを予防することができています。前回お伝えしたように、毎回の食事の中でエネルギーの摂取量を考えること、毎食何らかの形で肉や魚などタンパク質を含むメニューを取り入れること、そして「食品摂取多様性スコア」を指標として、様々な食品を偏りなく摂取することがフレイル予防する上で、非常に重要となります。
令和元年度に実施された「国民健康・栄養調査」の結果を見ると、BMI範囲未満 (BMIが痩せ・低栄養傾向にある人) の割合は、65歳以上が27.3%、75歳以上が34.4%、80歳以上では36.7%となっています。年齢が上がるにつれて、低栄養の傾向が強くなっていることが分かります。高齢者の低栄養状態を対岸の火事ではなく、身近に存在しているものと捉えることが重要です。低栄養状態になると傷が治りにくくなったりするだけでなく、合併症を発症しやすくなったり、死亡率の増加に直結することが、様々な研究で明らかになっています。フレイル予防を見すえ、より早い段階で食事・栄養への取り組みを行うことが必要となってきます。

体重変化と口内環境をチェックしよう

健康豆知識2022年11-3ご自身の身体の栄養状態を把握する上で最も大事なことは、体重の変化をしっかりと捉えることです。人間の身体は、常に一定の状態を保つようにできています。ですので、ダイエットをしているわけでもないのに、意図せず体重やBMI値が減少した時は注意が必要です (BMI = 体重÷身長の2乗)。体重やBMIが減少しているときは、食事によるエネルギー摂取よりも消費の方が大きくなっている、もしくは摂取がすごく小さくなっているという事が考えられます。体重は継続的にチェックするようにしてください。
次のステップでは、口腔機能と合わせたチェックが有効になります。「半年前に比べて固いものが食べづらくなった」「お茶や汁物をいただく際に、むせることが多くなった」等に思い当ったら要注意。体重の減少と同じく、口腔機能の低下はフレイルのリスクを高めることが統計学上でも明らかとなっています。
健康豆知識2022年11-4口腔機能を維持することは、イコール食べる機能を維持することにつながります。咀嚼機能が弱った方は良好な方に比べて、栄養素の接取効率が著しく下がり、特に肉類の摂取量が落ちてしまうことが分かっています。口腔機能は単純に食べるという事だけでなく、その先の栄養状態とも密接に関係しており、咀嚼機能が弱った方はフレイルに陥りやすくなるのです。色々な食品をバランスよく食べて「食品摂取多様性スコア」を高める為に、お口の健康状態も意識してみてください。ご自身で行う歯磨き等のセルフケアに加えて、定期的に歯科医院で歯科衛生士にチェックしてもらうこともお勧めします。

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