アルツハイマー患者、世界で推定3700万人
現在、アメリカにおけるアルツハイマー患者数は推定460万人。医療の進歩
などによる平均寿命の延びに伴い発症率は増加しており、2050年には1600
万人に膨れ上がるものと予想されている。ちなみに、世界保健機関(WHO)によると、
患者数は現在、世界で推定3700万人といわれる。
エコノミストらの推定では、アメリカで年間、少なくとも1000億ドルが
アルツハイマー患者の介護に使われているという。また、介護のため家族
が仕事を休むことによる、経済損失は約610億ドルにのぼるとみられている。
発症は通常、60歳を過ぎたころから。65歳以上になると発症率は5年ごとに
2倍増となる。64歳から74歳の約5%、85歳以上になると半数が発症している。
アルツハイマー症は若いころからはじまっている
実は、アルツハイマー症につながる脳の変異はすでに若いころから始まって
いる――そんな研究報告が昨年末に発表された。
ごく稀だが30代から50代にかけて発症することもあり、遺伝性要因が強いともみられている。
アリゾナ州フェニックスにあるバナー・グッドサマリタン・メディカル
センターの研究報告で、アルツハイマー病の危険因子といわれる変異した
APOE遺伝子を持つ12人の脳をスキャンしたところ、すでに発症した患者と
同じようなグルコース代謝の低下が見られたという。対象はいずれも発症
していない20歳から39歳。
研究員らによると、グルコース代謝の低下がアルツハイマー症の発症に
直接関与しているかはまだ明らかではないものの、脳の変異は発症の数
十年前から起きている可能性が高いという。
脳年齢をチェックし、発症リスクを知る
現時点では、アルツハイマー症が発症した場合、薬で進行を少し遅らせる
ことができたとしても、症状を改善したり完治することは望めない。そこで
注目されているのが、どうしたら予防できるかということ。
米国で話題の最新の予防法を紹介しよう。
まずは、最新の検査法で脳の年齢をチェックし、メンタルエクソサイズと
食事で脳のシェイプアップを図るというもの。
最新の検査法とは、P-300電気生理学検査と呼ばれるアルツハイマー症検査
で、症状のまったく出ていない状態でも発症の危険信号を察知できる。頭と
脊柱に電極をつけ、脳波のちょっとした変化から発症の危険を検査すること
ができる。
かかる時間はわずか15分、信頼性はかなり高い。心臓病の予防でコレステ
ロール値を検査するのと同じように、近い将来、脳の健康のため50を過ぎ
たら「P-300検査」が当たり前に――そんな指摘もあるほど。すでに使用
している神経科医も少なくない。
食事とメンタルエクソサイズで脳機能を活性化
脳の年齢チェックで実年齢を上回る脳の老化が発見されたら、メンタル
エクソサイズが必要だ。クロスワードパズルやトランプをしたり、本を
読んだり、文章を書いたり、楽器を演奏して頭を使う。テニス、ゴルフ、
水泳、ダンスなど体を動かすことも脳の刺激になり予防に役立つ。ある研究
報告によると、こういったアクティビティーを週に1度やっている人は、痴呆
になる危険が7%ほど減るという。また、回数を増やすことにより最高
63%まで脳機能低下のリスクを下げることができるという。
そしてバランスのいい食生活。とくに、葉酸とω-3系脂肪酸を豊富に
摂ることが予防の鍵といわれている。
54歳男性のこんな例が報告されている。周囲はまったく気付かなかったが、
男性本人は、頭の切れの悪さがちょっと気になった。そこでP-300検査を受
けたところ、脳の年齢は68歳、アルツハイマー症になりかかっていると診断
された。そこでメンタルエクソサイズと食事による予防をスタートした。
その結果、脳の年齢が32歳に若返ったという。
イチョウ葉やω-3系脂肪酸、アルツハイマー症予防で期待
アルツハイマー症の一要因として、フリーラジカル(活性酸素)などによる脳損傷
も挙げられており、米国では痴呆対策として、ギンコ(イチョウ葉)の役割に注目が集まっている。
これまでの研究で、全米6ケ所の医療センターで軽度の痴呆症患者309人に半数にイチョウ葉エキス40mg錠剤を1日3回与え、後の半数に偽薬を与えたところ、約1年間でイチョウ葉グループの27%に記憶力でわずかだが改善や社会行動での向上が見られた、一方、偽薬グループは14%だったという報告もある。
他にも、Oregon Health Science Universityがアルツハイマー患者424人を対象にした研究で、イチョウ葉エキス(GBE)を120mgから240mgを3〜6ヶ月間与えたところ、記憶や学習力テストの点数が3%上昇したという報告もある。
また、魚油に多く含まれるω-3系脂肪酸については、Neurology'03/7月号で、シカゴの研究グループが、65歳から94歳の被験者815人の
食生活やアルツハイマー病発生などについて4年にわたって調査したところ、1週間に
最低1回魚を食べた被験者は、稀にしか食べないか全く食べないグループに
比べアルツハイマー病に罹る割合が60%低かったと報告している。
他にも、魚や未精白穀類、アボガド、ナッツなどに含まれるビタミンB群の一つ、ナイアシン(ビタミンB3)にアルツハイマー予防が期待できることも報告されている。
Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry'04/8月号に掲載された記事によると、
シカゴの研究グループが、研究開始時、アルツハイマー病の兆候がない815人を対象にナイアシン摂取と罹患の関連性について4年間調査したところ、食事からナイアシンを
多く摂ったところ、アルツハイマーに罹る危険性が80%減少していることが分
かったという。