(2004年8月記事)
緑茶ブーム、米国でも〜米国緑茶市況最新報告

 今、日本では緑茶がカテキン配合のダイエットティーとしての新たな切り口で需要を掘り起こし、好調な売れ行きを示している。一方、米国でも緑茶が 生活習慣病やがんの予防などに優れた機能性を備えていることが次々に報告され、緑茶市場が拡大の一途を辿っている。米国緑茶市況および最新の研究成果を報告する。
米国緑茶市場、この10年間で5倍の伸び

 アメリカのお茶市場が明るい展望を示している。中でも、名産・高級品カテ ゴリーがこの十数年間で急成長を見せた。その最前線を行くのが、緑茶、 ホワイトティー(白茶)、オーガニックティー、“ファンクショナル”ティー といったところ。
 全体的に2002年の売り上げは前年比8.5%増を示し、また1990年と比較すると 5倍に達しているという。Tea Association of the USAでは、将来的にも 飛躍的な成長を遂げると期待を持っている。

 こうした急成長のキーポイントとなったのが、この数年の間、集中的に発表 されたお茶の健康効果研究報告である。高血圧、高コレステロールの改善 やがん予防への有効性に関するレポートが次々に報告されたことが売り上げ を伸ばしたと考えられる。

 今や中高年に達したベビーブーマーの間に高まる健康志向も一役買っ ている。高い医療費や数多く指摘される医薬品の副作用に嫌気がさしたベ ビーブーマーたちは、対処療法から疾患の予防へと関心を移した。

 また、医師ら医療関係者もアメリカ人の食生活見直しを声高に唱え、受け持ち患者 に対しこれまでの炭酸飲料、ソフトドリンク主体の嗜好からお茶へ変換する ようアドバイスを盛んに行っている。そうした世間の風潮と栄養学界の研究 トレンドとが相乗効果となり、お茶産業の躍進を生み出したものといえる。

高い抗酸化作用に研究者らの関心

 お茶の中で最も注目されているのが緑茶。Tea Council of the USAによる と、2000年の緑茶売り上げは、1億ドルに達したという。これは、研究熱が 高まり、次々とポジティブな成果を挙げていることによるものと推測される。 特に、緑茶の活性成分、ポリフェノールである、エピガロカテキンガレート (EGCG)は強力な抗酸化成分として、様々な疾患分野の研究者の関心を集め ている。

 研究ではよく紅茶と比較されるが、どちらも原料の葉(Camellia sinensis) は同じであり、後はその加工工程が違ってくる。 緑茶は摘んだ後蒸し、葉うち、乾燥、揉みと続くが、紅茶では取り入れ後、 蒸しがなく発酵が行われる。

 こうした工程の違いで、カテキンの量や成分物質の構造に変化が出ると考え られる。例えば、カテキンの量は緑茶が14.2gのところ紅茶は4.0g。だが、 紅茶には緑茶にないテアフラビンおよびテアルビジンが含まれる。

がん罹患の危険性が低下

 現在、EGCGの有効性は様々な分野で研究されている。例えば、今注目度NO.1 ががんに対する有効性。オレゴン州立大学研究グループが行った研究では、 結腸に腫瘍を誘発させたマウスに緑茶成分、抗炎症剤のsulindac、 ホワイトティーのどれかを12週間与えた。

 この結果、治療を受けなかったマウスには腫瘍が30発生。緑茶を与えたマウス では腫瘍数が平均17。ホワイトティーでは13だったことが分かった。また、 中国で行われた研究でも、1週間に1杯の緑茶を6ヶ月間飲むと、直腸、すい臓な どのがんに罹る危険性が低下したと報告された。 EGCGは、正常な細胞に変化をあたえず、アポプトシスといわれるがん細胞の死 を導くことが確認されている。

 また、喫煙関連のがんに対する緑茶の有効性を調べた研究が行われ、これでは DNAダメージを示す8-OhdGレベルを計った。喫煙者143人を3グループに分け、 デカフェ緑茶、デカフェ紅茶、水をそれぞれ1日に4杯与えた。この結果、 8-OhdGレベルが最も低下したのが緑茶グループで、紅茶、水グループには変化 が見られなかったことが分かった。

一方でがんへの有効性を否定する報告も

 しかしながら、一方でがんへの有効性を否定する研究報告も発表されている。 The New England Journal of Medicineに掲載された研究では、最低40歳の 日本人26,311人を対象に、緑茶の摂取頻度と家族の病歴を9年にわたって追跡 調査した。

 緑茶の摂取頻度では、1日に1杯(100ml)未満、1〜2杯、3〜4杯、5杯以上の グループに分けた。この結果、研究期間中に419件の胃がん罹患が報告されたが、 罹患はどのグループでもばらついており、緑茶と胃がんとの関連性は確認され なかったという。

 また、進行性前立腺がんに対しても影響を与えないという研究報告もある。 Mayo Cancer Clinicなどが発表した報告では、進行性アンドロゲン非依存性 前立腺がん患者42人に緑茶濃縮を毎日6g与えたが、マーカーであるPSAが短 期間でも下がった被験者は1人のみ。持続的低下を見せた被験者はゼロだった という。

緑茶のエイズ感染に対する影響も研究

 また、緑茶はコレステロール値の低下に一役買うことも報告、心臓病予防への 有効性が期待されている。中程度にコレステロール値が高い中国人240人を 対象にした研究で、被験者の半数には、テオフラビンとカテキンを同量配合 したカプセル(375mg)を、残り半数にはプラセボを12週間与えた。カプセル のテオフラビン量は、紅茶なら35杯分、緑茶は7杯分にあたる。 この結果、LDL(「悪玉」コレステロール)値を16%低下させたことが分かった。

 さらに、緑茶のエイズ感染に対する影響も研究されている。研究室内で行われ た実験ではHIV感染プロセスに対するEGCGの影響を調べた。これによると、 EGCGはエイズウィルスが免疫細胞であるT細胞およびCD4分子に結合するのを 防ぐという。

 ただ研究者は「研究室で使ったEGCGは高濃度のもので、人がただ毎日緑茶を 飲んでいるだけでは影響を与えないだろう。また、この分野に関しては、 人に対する臨床など掘り下げた研究が必要」と念を押している。

口臭防止やにきび治療でも有効性を発揮

 この他、緑茶は口臭防止にも有効性を発揮するという報告もある。Pace Universityで行われた研究では、緑茶抽出物と虫歯などを起こす数種の バクテリアと混ぜ合わせた。 その結果、バクテリアの増殖を30%抑えたことが明らかになった。緑茶に そうした殺菌、抗炎症効果が報告されていることから、にきび治療としても 研究対象になっている。

 これまでの研究で、被験者108人を2グループに分け、過酸化ベンゾイル クリームか緑茶抽出物クリームを1日2回、12週間使ったところ、緑茶 抽出物クリームグループでは、被験者の肌の色が明るくなり、その症状が 全体的に改善されたことが分かったという。

 また、マウス実験で、緑茶ポリフェノールが、パーキンソン病の原因と なる、MPP+を抑制したことも報告されている。MPP+は、脳細胞を死に至ら せると考えられている。






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