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オメガ3と健康

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ドコサヘキサエン酸(DHA)の中枢神経系作用(Ⅱ)

前回示したDHAの中枢神経系改善作用から、ヒトもDHAを摂取して、記憶学習能力の向上が図れる可能性が高いと考えられる。なお、ω3系脂肪酸のなかで血液脳関門を通過できるのはDHAのみであり、またその作用機序の一つとして、細胞膜リン脂質にDHAが取り込まれた細胞の膜流動性が高まり、そのため神経細胞の活性化や神経伝達物質の伝達性が向上すると推定される。

網膜細胞に存在するDHAは脂肪酸中の50%以上にものぼり、脳神経細胞中を遙かに凌ぐ事は良く知られている事実であるが、その機能と作用メカニズムにはまだ不明な点も多い。ERG(electroretinogram ;網膜の活動電位を描写したもの)波形のa波およびb波に関して81名の未熟児を調査し、その網膜機能を調べた結果、母乳あるいは魚油添加人工乳を与えた場合に比較して植物油添加人工乳を与えた場合では正常な網膜機能が低下していることを示唆した。ω3系脂肪酸欠乏ラットではERG波形のa波およびb波に異常が見られる事、また異常が見られた赤毛猿ではω3系脂肪酸欠乏食を解除しても元に戻らない等の事実から、未熟児におけるω3系脂肪酸の必要性が示唆されている。

未熟児の視力発達および認識力におけるω3系脂肪酸の重要性を検討した結果、DHA0.1%、EPA0.03%を含む調整粉乳を与えた場合では、視力と認識力が向上したが、EPAを0.15%と過剰に投与した場合ではやや生育が抑制されたことを報告した。これはEPAがアラキドン酸と拮抗する為と考えられ、従って未熟児用の調整粉乳の場合にはDHA/EPA比のなるべく大きい油脂を添加・強化することが有用であると考えられる(実質的にはマグロ油組成比が4:1)。

これらを総合的に考えると、神経系や視力の適正な発達にとってDHAが必須であり、未熟児だけでなく正常に成長している乳幼児にも有効であることが強く示唆されている。

以上のように、DHAは脳や神経の発達する時期の栄養補給にとどまらず、広く幼児期から高年齢層の脳や網膜の機能向上にも役立つとの期待が持たれている。すなわち現代および未来においても、極めて重大な社会問題として提起されている、老人性認知症の予防や改善に必要な「ブレインフード」の代表として評価すべき栄養素と考える。

プロフィール
矢澤 一良 (やざわ かずなが) 氏

早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構
規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 研究院教授

矢澤 一良(やざわ かずなが)

京都大学卒業、農学博士(東京大学)。(株)ヤクルト本社・中央研究所、(財)相模中央化学研究所にて勤務後、2000年に湘南予防医学研究所設立(主宰)。その後、東京水産大学大学院(現東京海洋大学大学院)客員教授 、東京海洋大学特任教授を経て、現在、早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部 研究院教授。
DHA/EPAに関する研究の功績に対する評価により、日本脂質栄養学会より学会賞「ランズ産業技術賞」、マリンバイオテクノロジー学会より学会賞「岡見賞」を授与される。

<主な著書(全著書120冊以上)等>
「マリンビタミン健康法」:現代書林 (1999)、「ヘルスフード科学講座」:食品化学新聞社(2007)、「アスタキサンチンの科学」:成山堂(2009)、「マリンビタミンで奇跡の若返り」:PHP研究所 (2010)、「機能性おやつ」:扶桑社(2012)など、その他論文・特許出願多数。

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