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オメガ3と健康

掲載 3

ドコサヘキサエン酸(DHA)の中枢神経系作用(Ⅰ)

DHAはω3系の炭素数22、不飽和結合6か所を有する高度不飽和脂肪酸の一種であり、EPA同様化学的な合成による量産は不可能である。1990年にマグロ・カツオの眼窩脂肪にDHAが高濃度に蓄積されていることを著者が発見し、以後工業化の道が開けた。DHAは、ヒトにおいても脳灰白質部、網膜、神経、心臓、精子、母乳中に多く含まれ局在していることが知られており、何らかの重要な働きをしていることが予想され、以下に示すように次々に実証されてきた。 2回に分けて記述する。

記憶学習能に関する報告として、アルツハイマー病で死亡した人(平均年齢80歳)と他の疾患で死亡した人(平均年齢79歳)の脳リン脂質中のDHAを比較した結果、脳の各部位、特に記憶に関与していると言われている海馬においては、アルツハイマー病の人ではDHAが半分以下に減少している事を報告している。さらに、300名の未熟児、7~8歳時の知能指数(IQ)を調べた結果、DHAを含む母乳を与えられたグループに比較して、DHAを含まぬ人工乳を与えられたグループではIQが統計的に有意に低い事を報告している。脳血管性認知症や多発梗塞性認知症のモデルラットを用いて、DHA投与による一過性の脳虚血により誘発される空間認知障害の回復を明らかにされている。また海馬の低酸素による細胞障害(遅発性神経細胞壊死)や脳機能障害の予防を示唆しており、具体的な疾患に対するDHAの治療効果をある程度予測させるものと考える。その他、栄養学的にDHA食を与えた動物では、記憶・学習能力が高いという実験成績は多くの研究機関より報告されている。

一方、ヒトへの臨床試験として、老人性認知症の改善効果が得られた。サプリメントタイプのものを、1日当たりDHAとして700~1,400㎎を6か月間投与した結果、脳血管性認知症13例中10例に、またアルツハイマ-病5例中全例にやや改善以上の効果があらわれ、その精神神経症状における、意思の伝達、意欲・発動性の向上、せん妄、徘徊、うつ状態、歩行障害の改善が認められている。

さらに二重盲検法を用いた脳血管性認知症患者へのDHAサプリメント投与による改善効果に関し、統計処理上明らかな有効性を示した。そのメカニズムについては、DHA投与群における赤血球変形能および全血粘度において、統計的に有意な改善がみられ、脳の微小血管における血行改善が示唆された。

プロフィール
矢澤 一良 (やざわ かずなが) 氏

早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構
規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 研究院教授

矢澤 一良(やざわ かずなが)

京都大学卒業、農学博士(東京大学)。(株)ヤクルト本社・中央研究所、(財)相模中央化学研究所にて勤務後、2000年に湘南予防医学研究所設立(主宰)。その後、東京水産大学大学院(現東京海洋大学大学院)客員教授 、東京海洋大学特任教授を経て、現在、早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部 研究院教授。
DHA/EPAに関する研究の功績に対する評価により、日本脂質栄養学会より学会賞「ランズ産業技術賞」、マリンバイオテクノロジー学会より学会賞「岡見賞」を授与される。

<主な著書(全著書120冊以上)等>
「マリンビタミン健康法」:現代書林 (1999)、「ヘルスフード科学講座」:食品化学新聞社(2007)、「アスタキサンチンの科学」:成山堂(2009)、「マリンビタミンで奇跡の若返り」:PHP研究所 (2010)、「機能性おやつ」:扶桑社(2012)など、その他論文・特許出願多数。

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