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2019年7月号記事 vol.182

仕事や家事のストレスは女性の心臓に大きな負担

WHR201908近年働く女性が増え、家庭内での家事・育児の分担や、女性が抱える負担の増加が社会的な問題となっています。今回は、女性の仕事・家事のストレスについて米国と日本のレポートから考えます。

配偶者やパートナーの助けがあるにしても、働く女性の多くはフルタイムの仕事をこなした後に夕食を作り、子どもの宿題や家の片付けに追われる日々を過ごしています。これらのストレス因子は全て、男性よりも女性の脳卒中や糖尿病、心疾患などの慢性疾患の発症リスクを高めるという研究報告が相次いでいます。このことを受け、米国心臓協会(AHA)は専門家の意見をまとめ、家庭を持つ女性は、家族だけでなく自身の健康に気を配り、ストレス軽減に努めるようにと助言しています(American Heart Association News 2019年5月20日)。米エモリー女性心臓センターでメディカル・ディレクターを務めるGina Lundberg氏は、専門家の立場から、「女性はまず自分自身をケアすべきだが、“それは利己的で、家族のことを優先すべきでは”という心の声に従ってしまい、結果的に自分自身をなおざりにすることが多い」と説明します。その上で、「女性は自分の健康管理のために時間を割くべきだ。そして、われわれ医療従事者は、女性が運動したり、十分な睡眠を取ったり、医師の診察や検診を受けたりするのは当然だという考え方を一般に広める必要がある」と述べています。

ある研究によると、仕事で大きなストレスを抱えていると報告する女性は、ストレスレベルが低い女性に比べて、脳卒中や心筋梗塞などの心血管イベントを発症するリスクが38%高い可能性が報告されています。同じく専門家で米ジョンズ・ホプキンズ大学医学部内科教授のSherita Hill Golden氏は「このようなストレス因子は不健康な生活習慣とも関連する」と指摘します。日常的なストレスが大きいと、「やるべきことがたくさんあって運動する時間がない」「不健康な食生活でも仕方がない」と自分に言い訳するようになりやすいということです。Golden氏は「運動する時間を確保し、自分自身のケアや健康的な食生活のために時間や労力をかけることは、子どもたちの習慣づけにも役立つ」と強調。その他にも、信頼できるプライマリケア医を探して、心血管疾患のリスク因子を定期的にモニタリングしてもらうとよいとアドバイスしています。また、Lundberg氏らは、血圧やコレステロールの管理、禁煙といった対策に加えて、女性には心と身体をリラックスさせるような趣味を持つことを勧めています。

また、大阪大学予防環境医学教授の磯博康氏の研究では、大家族で暮らす女性(主婦)では心疾患リスクが高まる可能性があることが明らかにされました。子どもや祖父母など複数世代が同居する日本人女性では、配偶者のみと暮らす女性に比べて重篤な心疾患と診断される確率が2~3倍高かったということです。医学誌「Heart(心臓)」オンライン版に掲載された今回の知見(筆頭著者は米ハーバード大学公衆衛生学部・池田愛氏)は、JPHC Study(厚生労働省がん研究班による多目的コホート研究)の一環として、日本人家族メンバー約9万1,000人を14年間追跡調査した結果得られたもので、男性には、同様のリスク増大はみられませんでした。

磯氏らは「複数世代で生活することで、喫煙や大量飲酒などの有害な習慣が増えるわけではなく(データでは配偶者のみと暮らす女性のほうが喫煙率は高い)、家事全般だけでなく外で働くことも求められ、ストレスが生じることが原因と思われる。フルタイムで働く中年の日本人女性は増加しているが、育児や高齢者の世話など、家事の負担は依然として主に女性の肩にかかっている」と述べています。米レノックスヒルLenox Hill病院(ニューヨーク)のSuzanne Steinbaum博士は「女性が高学歴になり職場に進出しても、家族の世話をするのはやはり女性。収入を得ながら家族の面倒もみることを要求されるストレスとプレッシャーは非常に大きい。家族に関する既存の概念を変え、役割を見直す必要がある」と述べています。米ニューヨークプレスビテリアンNew York Presbyterian病院のLori Mosca博士は、「複数世代で住む女性の心疾患のリスクは現実。スクリーニングではこのリスクファクター(危険因子)の可能性を組み入れて、必要に応じて支援サービスを紹介する必要がある」としています。

また、米国小児科学会(AAP)は、多忙な親たちの燃え尽き(burnout)を予防する方法として、以下のように助言しています:

・ドアを締めて心呼吸する、短時間の散歩に出るなどをして、仕事の合間に数分間、完全にリラックスできる時間を取る。

・楽しく、活動的に、新鮮な気持ちで帰宅するように努める。

・週に何度か、夕食に健康的な料理のテイクアウトを利用する、家事の手伝いをしてくれる人を雇うなど、負担を減らす方法を見つける。

・部屋の掃除に協力してもらうなど、一部の責任を家族で分担する。

・必ずしもすべてを一度にはできないことを認め、最も重要なものを優先する。

・週末には、静かな部屋で読書をする、1人でジムに行くなど、自分のためのリラックスできる時間をとる。

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