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2018年7月号記事 vol.170

座りすぎで死亡リスクが上昇する14の疾患

WHR 2018082近年、座って過ごす時間が長いと死亡リスクが高まるとする報告が相次いでいます。しかし、死因別では、がんや心血管疾患以外の死因を幅広く検討した研究はほとんど行われていませんでした。そこで「American Journal of Epidemiology」6月26日オンライン版に発表された米国がん協会(ACS)のAlpa Patel氏らが実施した研究では、がん予防研究-Ⅱ(Cancer Prevention Study-II)栄養コホートのデータを用いて、余暇を座って過ごす時間の長さと全死亡リスク、さらにさまざまな死因別の死亡リスクとの関連について検討しました。

対象は、登録時に主要な慢性疾患がなかった男女12万7,554人。年齢や性、学歴、喫煙の有無、食生活、運動習慣などを考慮して解析した結果、余暇を座って過ごす時間が1日に6時間以上の人では、3時間未満の人と比べて全死亡リスクが19%高いことが分かりました。また、死因別では、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病、腎疾患、自殺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺疾患、肝疾患、消化性潰瘍などの消化器疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、神経障害、筋骨格系障害の14の死因による死亡リスクが上昇することが明らかになりました。さらに、死亡リスクの上昇の程度は死因によってばらつきがみられ、がんでは約10%の上昇でしたが、筋骨格系障害では約60%の上昇が認められました。以上の結果を踏まえ、Patel氏は「この研究結果のメッセージは“もっと動くべき”といういたってシンプルなものだ。座位時間は短いほど身体に良い。1時間座って過ごしたら2分間立つだけでも脂質や血糖、血圧の値は改善する」と話しています。

また、椅子やソファに長く座り過ぎると健康だけでなく脳にも悪影響を及ぼす可能性があることが「PLOS ONE」4月12日オンライン版に掲載された研究で明らかになりました。この研究では、座った姿勢で長時間過ごす人は、新たな記憶の形成に重要な脳領域の皮質が薄いことが分かりました。研究を行った米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)セメル神経科学・ヒト行動研究所のPrabha Siddarth氏らは、こうした脳領域の皮質の菲薄化には、座りがちな生活による運動不足ではなく、座ること自体が関連しているのではないかと指摘しています。

この研究では、認知機能が正常な45~75歳の男女35人を対象に、日常的な運動量と過去1週間の1日の平均座位時間について尋ねた上で、脳のMRI検査を実施し、記憶の形成に関わる内側側頭葉(medial temporal lobe)と小領域(subregion)の皮質の厚さと運動量および座位時間との関連を調べました。その結果、座っている時間が長い人ほど内側側頭葉とその小領域の皮質が薄いことが分かりました。一方で、こうした脳領域の皮質の厚さと運動量との間には関連はみられず、比較的運動をしている人でも座位時間が長いとこれらの領域の皮質は薄くなっていました。ただし、今回の研究では、座ること自体が脳組織の菲薄化の原因であるとは証明されていません。Siddarth氏らの研究チームはこれらの関連を長期的に調べる研究を実施したいと話しています。

専門家の一人で米イェール・グリフィン予防研究センターのDavid Katz氏は「これらの関連はさらに研究を進める必要があるが、その対処法は明確で、今すぐにでも取り組める簡単なことだ。つまり、1日に何度も立ち上がって歩き回ることだ」とコメントしています。

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