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「フレイル」ってなに?~自立した老後を過ごすための予防、診断、対策~①

① フレイルの予防の運動と食事

最近、「フレイル」という言葉をよく聞かれるようになりました。フレイルとは、加齢とともに心身の活力が低下し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの危険性が高まった状態です。フレイルの予防には、栄養・運動・社会参加の3つが重要な柱になります。2018年11月28日に実施された「第152回老年学・老年医学公開講座 『フレイル』ってなに?~自立した老後を過ごすための予防、診断、対策~」に基づいて、3回にわたってお話します。

加齢によって、運動能力や記憶力が年々低下するのは避けられないことですが、日ごろから予防することで、症状の進行を遅くすることが期待できます。1回目の今回は、「フレイルの予防になぜ運動と食事が重要なのでしょうか?」(東京都健康長寿医療センター研究所副所長 重本和宏氏)の講演からご説明します。

運動習慣の大切さ

近年、私たちの体の中で免疫を司る細胞の機能を制御する様々なサイトカインやその他の蛋白が、骨格筋から分泌されることが報告され、それらをまとめてマイオカインとして総称されるようになりました。私たちの体は、骨格筋から分泌された様々なマイオカインの作用により、疲労に打ち勝って体をより効率的に動かすことができるようになります。そして、骨格筋の機能低下と筋委縮が起きるために、このようなマイオカインの機能が低下してフレイルの状態になると考えられますが、いずれのマイオカインも運動によって産生や機能が高まることが明らかになっています。骨格筋の機能を維持してマイオカインの機能を高めるためにも、運動習慣は非常に大切であると、重本氏は指摘しています。

食事が刻む体内時計

これまでに「体内時計」という言葉を聞いたことはありますか。一番わかりやすいのは食事や睡眠ですが、この体内時計で刻まれているリズムはストレス応答に必要なホルモンなどの分泌も調節しています。最近、食事も体内時計を調節する働きがあることが明らかにされました。

私達は、大体決まった時間に食事をしますが、食後すぐに腸から吸収された栄養素が血液を介して肝臓に運ばれ、栄養素を処理するための肝臓の様々な機能が一斉に働き始めます。この肝臓の機能を制御するスイッチには、体内時計と全く同じスイッチが使われています。さらに、この体内時計のスイッチは肝臓だけでなく、骨格筋、脳、皮膚など体の隅々の組織でも食事に合わせて同調して動いていることが明らかになりました。

昼間は朝昼晩と食事をとることで日中の活動に必要な栄養素が消化管から血液中に十分に補給されます。一方、夜間寝ている間も体の中の栄養素が日中ほどではなくても使われているため、目が覚める朝方には軽い飢餓状態となります。この1日の間の栄養素の増減のリズムが、体内の臓器の機能と同調して体内リズムの調子を整えるのです。フレイルの状態は、このような体内リズムが乱れていると考えられるでしょう。運動と規則正しくバランスのとれた食事をとる習慣を毎日続けることで、体内時計を整えることができるのです。

運動習慣や食事に注意することでフレイルを予防することができ、さらに体内時計によってリズムを整えて健康を保つことができます。中年期を過ぎて高齢期になると、徐々に私たちの身体機能が減弱する、すなわちフレイルの時期があります。しかし、日常生活を注意することで、フレイルの状態から認知症が引き金となって介護が必要な段階までに一気に進まないようにできるのです、と重本氏は指摘しています。