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「がん」と上手に付き合うためのヒント(1)

高齢化社会が進み、日本でも大きな死因の一つとなっているがん。しかしその一方でがん研究は急速に進歩しています。2018年2月5日(月)に「がんになっても寿命をまっとうできる時代がきた」と題して第149回老年学・老年医学公開講座(東京都健康長寿医療センター)が実施されました。今回は、本講座に基づいて2回にわたってがん治療の現状をご紹介します。

もしも肺がんになったら

「もしもわたしが肺がんになったら」と題して、山本寛氏(東京都健康長寿医療センター 呼吸器内科部長)が講演しました。

20年ほど前までは細胞傷害性抗がん剤という、世にいう「抗がん剤」しか選択肢がなく、これを用いても半年生きるのが精一杯で、しかも有害事象も多くみられました。しかし、その後、抗がん剤は進化し、抗がん剤の有害事象を減らす薬もいろいろと使えるようになりました。最近では、傷のついた遺伝子を有する細胞を標的にした「分子標的薬」という薬が開発され、遺伝子に傷のついたがん細胞だけを標的にした治療が可能になりました。これによって、遺伝子変異がある人には圧倒的な効果を、少ない有害事象で期待できるようになりました。

しかし、大事なことは、遺伝子の異常がない人には全く効果が得られないという点です。そのため、遺伝子の異常のタイプが合致するかどうかを事前に調べておく必要があります。どのような遺伝子異常があるかは、検査によって調べる必要があります。近い将来には無数の遺伝子異常を短時間で検出できるような時代になり、その遺伝子異常のパターンによって薬を個別に選択できるようになる見込みです。

また、がん細胞を退治する際に大きな役割を果たすのがT細胞と呼ばれる免疫細胞ですが、加齢とともに機能が低下してしまいます。しかし、T細胞からの攻撃を回避する力を獲得したがん細胞に対して、T細胞が再び攻撃できるようにする新たな薬剤「免疫チェックポイント阻害剤」が開発されました。これは、抗がん剤による従来の標準治療と比較して生存期間を延長し、重篤な有害事象の頻度が少ないことも明らかにされています。ただ、誰にでも投薬できるわけではなく、適応がある場合のみ受けることができます。

これまで、「健康長寿」のためにはどの治療が有効か、という観点でがん治療が語られることはありませんでした。「長生きのためにはどの治療が有効か」という視点で薬の効果が評価されてきたからです。しかし、できることなら日常生活への影響は最小限に、つらく苦しい症状もできるだけ最小限にできる方法が望ましいのではないでしょうか。幸い、最近の薬物療法の進歩によって、症状を可能な限り先延ばしにし、その間の生活機能を維持することが可能になりつつあります。「がんと戦う」か「がんと戦わない」のがいいのか、気になるところではありますが、その前にまず「がんとどう付き合っていくか」を考える時代が近づいているのかもしれません。