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脳卒中の予防で、認知症も予防

高齢化が進む中、認知症が大きな関心を集めています。2017年6月2日に練馬文化ホールにおいて「認知症、でも大丈夫」と題して東京都健康長寿医療センターの講演が実施されました。今回は、この講演をもとに認知症の予防や認知症高齢者の方々にやさしい地域づくりについてご紹介します。

脳卒中の予防で、認知症も予防

金丸和富氏(東京都健康長寿医療センター・脳卒中科部長)は、脳卒中の予防と認知症について講演しました。認知症を起こす原因のなかで代表的な病気として、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症があります。いずれも治らない病気だという認識が広がっていますが、血管性認知症であれば、脳卒中の予防が認知症の予防に直結します。また、アルツハイマー病も、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を治療すれば、その進行を抑制できる可能性があることが明らかになってきました。

これまで、アルツハイマー病と血管性認知症では、治療方法が異なるように考えられてきましたが、近年の研究で動脈硬化がアルツハイマー病治療において重要である可能性が分かってきました。2013年の医学専門誌に、イギリスの75歳以上の高齢者に占める認知症の頻度が、過去20年間で減少したという報告が出ました。高齢化に伴って認知症は必然的に増加するという認識とは正反対のものです。イギリスは2007年に「生活習慣病の治療が認知症の治療にもなる」という考えのもと、国家戦略として認知症対策に取り組んできました。特に高血圧の管理や禁煙を推進したことが認知症を減らす要因になったのではないかと分析されています。フランスのリール大学での研究でも、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙といった生活習慣病を管理することによってアルツハイマー病の進行を止められることが明らかになりました。

生活習慣病の管理においては、食事と運動が基本となります。食事については、バランスよく野菜などを摂取することが大切ですが、生活習慣病を有する場合には、その治療に準じた食事を摂る必要があります。運動に関しては、会話をしながら歩いたり、歩きながら計算をするなど二つの課題を同時にこなして、脳に相応の負荷(負担)をかける方法が海馬(脳の記憶をつかさどる部分)の萎縮が抑制できるという研究報告があります。音楽や料理、絵画や旅行など、幅広い趣味を活用することも有効でしょう。

認知症になっても、幸せに暮らす

粟田主一氏(東京都健康長寿医療センター研究所・自立促進と介護予防研究チーム研究部長)は、「認知症高齢者等にやさしい地域」づくりについて講演しました。一般に、認知症の初期には認知機能の低下や生活機能の低下とともに、社会とのつながりが希薄になって、孤立する傾向が見られます。そのような日々の中で、家族や隣近所との間でトラブルが生じたり、地域の社会での暮らしが困難になってしまう場合があります。このような状況に陥る前に、仮に認知機能や生活機能が低下しても、「その人が暮らす地域の中で、その人が必要としている支援を一体的に提供できる」仕組みが必要であると粟田氏は指摘しています。

認知症の方の日々の生活を支えるためには、医療機関だけではなく地域包括支援センター、訪問介護ステーション、介護保険サービス事業所、薬局などさまざまな機関の専門職が情報を共有して、調整しながら連携することが必要となります。近年、地方自治体で認知症支援コーディネーター、認知症支援推進員等、これらの連携を主導するコーディネーターの設置が進められていますが、まだ必要なシステムが十分に整っていないのが現状だと言えるでしょう。このような試みの一つに「認知症カフェ」という活動があります。認知症カフェとは、認知症の本人、家族、知人、専門職、認知症に関心のある地域の人々が、気軽に集まって交流を進めることができ、社会とのつながりを持つことができます。日本では、まだ歴史が浅いために、どのような効果を発揮するのか、まだ科学的なデータは明らかにされていませんが、カフェがとても重要な役割を果たしていると実感されているご本人、ご家族、地域に暮らす人々は決して少なくないと、粟田氏は述べています。それぞれの地域の特性に応じた社会支援のネットワークを、早急に創り出すことが必要だと言えるでしょう。