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現代社会と睡眠障害―よい眠りを摂るために―

多忙な現代社会、そして急激なライフスタイルの変化によって、睡眠のトラブルを抱えている人が急増しています。平成29年2月16日(木)に東京都庁大会議室において、公益財団法人東京都医学総合研究所によって、第8回都民講座「現代社会と睡眠障害―よい眠りを摂るために―」が実施されました。

まず、三島和夫氏(国立精神・神経医療研究センター)が、「ナゼ眠るのか、ナゼ眠らなくてはならないのか―睡眠と健康の深~い関係―」と題して講演しました。三島氏は、受験や残業、夜型勤務などによる夜型生活によって体内時計の規則的な睡眠リズムとの間に「社会的ジェットラグ」が生じ、睡眠障害や寝不足の原因となっていると指摘しています。寝不足は産業事故や能率低下の原因となり、うつ病や認知症をはじめ、生活習慣病などさまざまな疾患のリスクを高めることから、個人の問題であると同時に社会の問題でもあります。睡眠問題による社会的コストは、欠勤や生産性低下による経済損失だけでも3兆5千億円/年(日本)と言われ、産業事故によるコストや医療費の増加も合せると、非常に大きな経済的損失となっていると考えられるでしょう。

OECD加盟諸国の大人の睡眠時間を比較しても、他の国では8.5時間前後の国がほとんどですが、日本では7.5時間程度と圧倒的に睡眠不足となっています。その中でも、働く世代、特に女性で睡眠不足が顕著になり、仕事、家事、育児などの様々な負担を負っていることによって身体に負担がかかっていることが読み取れます。睡眠は、「いつ眠るか」(体内時計の規則的な睡眠リズム)と「どれだけ眠るか」(恒常的維持のための十分な睡眠時間)の二要素によって構成されますが、夜型生活の進行によって睡眠のリズムが乱れ、寝不足が進行し、いずれの要素にも問題が生じていると言えるでしょう。

特に、現代社会に見られがちな「寝不足により週末に寝だめし、日中の日照曝露が減少したり運動不足になり、そして夜間の光/ブルーライトへの曝露によって、さらに就寝時間が後退して遅寝が固定化する…」という生活習慣が、「社会的ジェットラグ」の悪循環を招いていると言えます。「社会的ジェットラグ」は、インスリン抵抗性の上昇、肥満、HDLコレステロールの上昇、認知機能の低下等、様々な健康リスクとの関連が報告されており、改善をしないと様々な疾患を引き起こす可能性があります。

また、睡眠・体内リズムには、ある程度個人差があることにも注意が必要です。特に思春期から青年期にかけては「体質的に」夜型が強まる時期で、この時期に「早寝・早起き・朝ごはん」は大変であることも事実です。実際に、オックスフォード大学で約6万人の子供を対象に「10時始業の効果」を検証したところ、成績上位者の割合が大幅に増加したという例も見られます。当然のことながら、極端な遅寝・寝坊の生活習慣は避けなければなりませんが、この時期に無理な早寝・早起きを強いることは、かえって睡眠不足を招いてしまうことも危惧されます。大人でも朝型が効率的な人もいれば、それが非効率的な人もいます。生産性と効率を向上させるためには、全ての人に一律なのではなく、生活のリズムの個人差を配慮した制度設計こそが望ましいのではないでしょうか。

この点について、本多真氏(公益財団法人 東京医学総合研究所 睡眠プロジェクト)は、「居眠りするにはわけがある」の講演の中で、年齢、性別、季節的変動、個人の体質など、眠りには様々な個人差があることを指摘し、睡眠日誌を記録する、自分の身体の声(疲れた、眠い)に耳を傾けるなどによって、自分の時間を管理することの大切さを述べています。本多氏は、よい眠りの工夫として、①光とリズム:日中に太陽光を浴び、夜間の光照射を減らす ②体温調整:就寝2~3時間前に入浴をして血流改善・発汗する ③規則的な食事:飢餓状態による不眠を避ける/夕方以降のカフェイン、寝酒、寝たばこを避ける ④リラクゼーション:高照射を避けて環境を整備し、自分に合ったリラックス法によって意識的に緊張を解く(牛乳やハーブ、香、軽いストレッチ、音楽など)が有効であると述べています。本多氏は、まとめとして以下のような睡眠12か条を紹介しました。

① 良い睡眠で、からだもこころも健康に

② 適度な運動、しっかり朝食、眠りと目覚めのメリハリを

③ 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります

④ 睡眠による休養感は、心の健康に重要です

⑤ 年齢や季節に応じて、昼間の眠気で困らない程度の睡眠を

⑥ よい睡眠のためには、環境づくりも重要です

⑦ 若年世代は夜更かしを避けて、体内時計のリズムを保つ

⑧ 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を

⑨ 熟年世代は朝晩メリハリ、昼間に適度な運動で良い睡眠

⑩ 眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない

⑪ いつもと違う睡眠には、要注意

⑫ 眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を

「睡眠力」とは、睡眠と心身の調和であるとであると言えるでしょう。自分自身の適切な睡眠時間と生活のリズムを把握し、質の良い眠りを十分に確保する生活習慣を心がけて、健康で活力に満ちた毎日を送りたいですね。