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アレルギーは文明病なのか?

今や国民の3人に1人が花粉症に悩まされているといわれます。このようなアレルギー人口の増加は、文明や医療の発達と密接に関わっているようです。今回は、文明とアレルギーの関係についてご紹介します。

アレルギー、「免疫の過剰反応」という意味ではない 

アレルギーは「免疫の過剰反応」とよくいわれます。しかし、どうもこの解釈は正確ではないようです。元々アレルギーという言葉は、ギリシア語のallos(他の)、ergon(働き)の2語から成るもので、これを直訳すると「他の働き」になります。つまり、アレルギーの正確な意味は、「免疫の通常とは異なる他の働き」ということになります。

2015年4月19日(日)、東京国際フォーラムで、第55回「日本呼吸器学会学術講演会」が開催されました。この中で、NKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)の発見者として世界的に知られる理化学研究所総合生命医科学研究センター特別顧問の谷口 克氏が「アレルギーは文明病か?」と題して講演しました。

アレルギーと密接に関わる「免疫」ですが、この「免疫」はいつ頃から知られるようになったのでしょうか? 「免疫」の存在。それが知られるきっかけとなったのが、1346年に世界的に発生したペストや天然痘の大流行です。当時のヨーロッパの人口の1/3~2/3近くがこれらの疫病で亡くなりました。ロンドンでは1日に約6,000人が亡くなったといわれています。

国民の20~30%が花粉症で悩まされている 

しかし、これらの疫病にかかっても運良く治った人がいました。そして、後に治った人は二度と同じ疫病に感染しないことも分かってきました。このことから「一度罹ると二度と罹らない」のは何故か、ということが研究されるようになり、1789年のエドワード・ジェンナーのワクチンの発明へと繋がっていきます。その後、日本でも北里柴三郎によりウサギを使った実験で世界で初めて「抗体」が発見され、「免疫」のメカニズムが解明されます。そして、次々にワクチンが製造され、もう天然痘には感染しないといわれるほど、私たちは非常に衛生的で恵まれた環境の中で過ごせるようになりました。

しかし、その一方で増加しているのがアレルギー疾患です。今や国民の20~30%が花粉症に悩まされ、20代の90%が花粉症予備軍といわれています。またアトピー性皮膚炎もこの15年で3倍に増えています。

アレルギー発症予備軍、2000年には国民の8割以上に 

ところで、アレルギーを起こすのはIgE抗体といわれる物質ですが、これも日本人によって発見されたものです。アレルギー疾患の原因であるダニやスギに対するIgE抗体の保有者、つまりアレルギー発症予備軍は1970年には国民の10%以下でしたが、2000年には80%以上にもなっています。今や、こうしたアレルギーの増加傾向は先進国に共通に見られるものとなっています。

アレルギー疾患が増えた原因として谷口氏が指摘しているのが、「衛生仮説」です。これは、乳幼児期までの感染や、非衛生的環境がその後のアレルギー疾患の発症を低下させるという疫学調査結果に基づいたものです。例えば、ドイツでは、衛生的な西ドイツ出身者の方が東ドイツ出身者よりアレルギー疾患患者が多いという報告があります。子沢山で狭い家に育った人、農家で暮らした人、幼少期に土いじりをしていた人、ペットと一緒に暮らしている人にはアレルギー疾患が少ない、といわれます。

また、生後1年の間に母乳で育ったかどうかが、アレルギーの発症率に大きく関与することや、1歳までに抗生物質を多用した場合、非常に高い確率でアレルギーが発症することも分かっています。日本では1960年代から抗生物質が一般的に使用されるようになりましたが、これを境にアレルギー疾患が激増しています。

ここで注目すべきは「感染症」が減少すると「アレルギー」が増加するという関連性である、と谷口氏は述べています。つまり、人類の寿命と健康に大きく貢献してきた「ワクチンの発明」や「感染症の撲滅」が進んだ一方で、アレルギーが激増しています。このことから「アレルギーは文明病ではないか」と谷口氏は指摘しています。

これらのことから、特に幼少期には抗生物質の多用は避けたほうが、アレルギーになりにくい体質になる可能性が高いといえるかも知れません。