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日本食と遺伝子解析

日本食が「健康に良い」と世界的に注目を浴びています。「食」は遺伝子にも影響をおよぼすことが考えられますが、今回は日本食と遺伝子との関係についてご紹介いたします。

食べ物で遺伝子が変わる

食事を変えると体型が変わり疾病が改善した、あるいは性格が変わったということがよく聞かれます。近年の遺伝子解析の発達により、双子でほぼ同じ遺伝子でも、食べる物が違うと将来発症する疾患に大きな差が出ることが明らかになっています。つまり、食べ物が遺伝子に何らかの影響を与えているということがいえそうです。

2015年2月21日(土)、星陵会館で、「第17回脂質栄養シンポジウム 内臓脂肪をためない生活習慣」が開催されました。この中で、宮澤 陽夫氏(東北大学大学院教授)が「日本食の遺伝子解析で見た栄養特性」と題して講演しました。日本食は世界無形文化遺産に登録されるなど、ここ数年、何かと注目を集めていますが、宮澤氏は、10年以上前から日本食の栄養特性について研究を続けてきました。長期間、欧米食を食べている人と日本食を食べている人とでは、体質が大きく異なってきます。このことから、食べ物が遺伝子に影響をおよぼしていることが考えられます。

しかし、それを科学的に裏付けるデータは、宮澤氏が研究を始めた頃はほとんど無く、「食べ物くらいで遺伝子は変化しない」と、多くの専門家が考えていたといいます。

欧米食で、ストレス応答遺伝子が顕著に増加 

日本食は「健康に良い」といわれています。しかし、「現代の日本食」と「1960年頃の日本食」ではどのように違うのでしょうか。あるいは「欧米食」とではどうでしょうか。この点について、宮澤氏は「PFCバランス」を挙げています。PFCバランスとは「一食の食事におけるたんぱく質、脂質、炭水化物のエネルギーバランス」のことです。日本食、アメリカ食、フランス食、イタリア食を比較すると日本食は圧倒的にバランスがよく、きれいな円を描きます。

ただ、このPFCバランスも「現代の日本食」は乱れつつあり、「アメリカ食」のそれに近い状態、つまり脂質が極端に多い食事になりつつあります。ちなみに、1960年代と現在とを比較すると1人あたりの米の消費量は年間で120kgから60kgと約半分に減っています。一方で、肉の摂取量は年間6kgから30kgと約5倍に増え、更に脂質も年間4kgから15kgと大きく増えています(農水省調査)。日本食と欧米食のどちらが健康に有益かを評価するために、ヒトでは個人差が大きいため、宮澤氏は、まずラットの肝細胞の遺伝子の発現を調べました。

試験では「1960年代の日本食」を軸に、比較対象を「2002年の日本食」「2002年の欧米食」としました。この3種類の食事で最も違いが大きかったのが脂質で、「1960年代の日本食」と比べると、残りの2食には脂質が多く含まれていました。管理栄養士が実際に調理し、凍結乾燥し粉食にしたヒトの1週間分に当たる食事をラットに与えました(ラットでは3週間分に相当)。3週間後、「2002年の欧米食」で最もラットの肝脂肪が増加し、「1960年代の日本食」では肝脂肪の増加はほとんどみられませんでした。

また遺伝子の発現について、「2002年の日本食」と「2002年の欧米食」とで比べると、とくに後者のほうで、ストレス応答遺伝子の顕著な増加が見られたといいます。これは肝臓が脂質によってストレスを受け(肝細胞が傷ついたり負担がかかったりしている状態)、その解消のために必要な酵素が分泌されていることを意味します。つまり、「2002年の日本食」や「2002年の欧米食」は「1960年代の日本食」に比べて肝臓への負担が大きく、それがストレスとなりストレス応答遺伝子が発現していたということです。

欧米の病院で入院食に「伝統的日本食」を取り入れるところが増えている  

現在、欧米の病院で入院食に「伝統的日本食」を取り入れるところが増えています。「1960年代の日本食」のなかでも、宮澤氏が特に注目しているのが「米」です。特に玄米である必要はありませんが、精製されすぎていない、糠のほどよく残った米には、抗炎症や抗酸化など機能性の面で優れた利点があります。

戦後、食の欧米化が進み、栄養バランスの問題が指摘されていますが、遺伝子解析から見ると、先のラットの試験からも分かる通り、「1960年代の日本食」は「身体に優しい」ものであったということがいえそうです。