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歩行速度と長寿の関係

加齢とともに筋肉が退化し、膝の疾患などさまざまな障害が生じます。しかし実際には加齢だけが原因ではなく、「筋肉を使わない」ことに問題の本質があるようです。今回は、筋肉と寿命の関係についてご紹介いたします。

心臓機能も鍛えなければ低下する 

戦後、交通手段の発達に伴い、運動不足による糖尿病の増加が報告されています。運動不足はさまざまな疾患を呼び込む元となります。体を動かし、筋肉を鍛えることは病気予防の基礎といっても過言ではありません。例えば、私たちの体内には直列にするとおよそ地球2周半分(約10万km)の血管が走り、平常時で1日10万回の心拍数があるといわれます。心臓も筋肉であり、鍛えなければ低下します。しかし、このことはあまり指摘されません。

2015年2月14日(土)、早稲田大学先端生命医科学センターで、時間栄養科学研究会によるシンポジウム「時間栄養・運動レシピ開発コンソーシアム」が開催されました。この中で、森谷 敏夫氏(京都大学大学院人間・環境学研究科 応用生理学研究室)が「生活習慣病予防・改善における運動の役割」と題して講演しました。

サルコペニア、「筋肉を使わない」ことでもたらされる 

成人が3週間寝たきりの生活をすると約30%体力が低下するといわれます。また、宇宙飛行士が無重力で2週間筋肉を使わずに過ごすと心臓は30年ほど老化し、地球に帰還した時に糖尿病のリスクにさらされるといわれます。このことは、私たちは心臓を含む全ての筋肉を運動で活性させ続ける必要があるということを示しています。加齢に伴うサルコペニア(加齢性筋肉減少症)はロコモティブシンドローム(運動器症候群)の前段階として知られますが、原因は加齢による筋肉の低下だけでなく、「筋肉を使わない」ことからもたらされると森谷氏は述べています。

85歳、90歳でも登山のできる体力を維持している人もいます。筋力や体の柔軟性は、使わないことにより退化していきますが、現在の自分の体は、直近の10年で「どんな食べ物を摂ったか」だけでなく「どんな運動(動き)をしたか」によって決まると言われます。

歩行速度が遅ければ遅いほど、寿命は短くなる

最新の運動生理学で、歩くスピードが遅い人は、歩くスピードが早い人よりも寿命が短い傾向にあります。3万4,000人を対象にした最短で9年、最長で21年の大規模追跡調査の分析から、その人の75歳時の歩行速度で10年後の生存率が予測できると考えられています。分析によると、歩くスピードが低下しても女性のほうが長生きであることに変わりはありませんが、男女問わず、歩行速度が遅ければ遅いほど、寿命は短くなるという共通点があることが明らかになっています。歩くという行為はエネルギーだけでなく、心臓、肺、循環器系、神経系、筋・骨格系に多くのことを要求します。歩行速度が遅いということは、これらのいずれかのシステムに不具合や障害が生じているということを意味しています。

高齢者こそ筋肉トレーニングが必要

ここ数年の日本人の食事調査で、高齢者のたんぱく質の摂取不足が指摘されています。しかし高齢者がたんぱく質を必要量摂取しても、なかなかサルコペニアは予防されないことも分かってきています。つまり、これは高齢者にこそ筋肉トレーニングが必要であるということを示しています。

もちろん、若い頃から適度な運動で筋肉を鍛えることも大切です。今から40年前と比べて栄養学的に食事の内容が変わりましたが、1日あたりの運動量も大きく変わっています。私たちは40年前より明らかに「動かない」生活をしています。近年、肥満の増加が指摘されていますが、食べ過ぎで太っているのではなく、動かないことで太っているということが言えるかも知れません。