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多動で糖尿病のリスク軽減

前回の健康豆知識では、長寿に影響を与える運動習慣についてご紹介しました。運動は長寿だけでなく、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の改善にも役立ちます。今回は、運動療法による糖尿病の改善効果についてご紹介いたします。

なぜ、多動が必要なのか 

戦後、日本で糖尿病患者が増加しています。その原因として指摘されているのが「食」の欧米化と運動不足です。これまでは食事改善の指導が中心でしたが、近年、運動療法による糖尿病の改善効果に注目が集まっています。

2014年1月31日(金)、千代田区立内幸町ホールで、「全国生活習慣病予防月間2014 市民公開講座」が開催されました。主催した一般社団法人 日本生活習慣病予防協会では、生活習慣病の予防に「一無(禁煙)、二少(少食、少酒)、三多(多動、多休、多接)」を掲げていますが、今年は「運動で減らす体重、増やす寿命」をスローガンに啓蒙活動に力を入れたいと述べています。この中で、順天堂大学大学院代謝内分泌科准教授の田村好史氏が「多動はなぜ必要か?~実施率100%の運動指導」と題して講演しました。田村氏は、スポートロジーの観点から糖尿病治療に取り組んでいます。スポートロジーとはスポーツを医学や健康に応用しようという新しい学問です。

先進国ほど運動不足が深刻化 

今、先進諸国では運動不足が共通の問題となっていますが、その背景には自動車やエスカレーター、エレベーターなどの移動手段の発達があります。つまり、先進国ほど運動不足が深刻化していると言えます。

しかしその一方で、人々は運動の重要性にも気づきはじめています。近年アメリカでは各地に24時間営業のスポーツクラブが増えています。ただ残念なのは、そうしたスポーツクラブの入り口近くにはエスカレーターがあって、すぐ脇にある階段を利用しようとする人が少ないことです。運動が大切と分かっていても、やはり楽なほうを選んでしまいます。

糖尿病患者の3分の1が最終的にがんで亡くなっている 

運動不足の深刻化とともに、欧米では「Exercise is Medicine!」という言葉が至るところで見受けられるようになっています。運動の効果は計り知れません。骨粗鬆症の予防や減量、アンチエイジングに効果を発揮します。また良質な睡眠をもたらし、動脈硬化を予防し、がんの予防にもなります。もちろん糖尿病予防にも不可欠です。糖尿病患者の3分の1は最終的にがんで亡くなっていると言われています。つまり運動による糖尿病の改善はがんの発症リスクを下げることにも繋がります。田村氏によれば、大腸がん、閉経後の乳がんと子宮体がんは明らかに運動で予防できることが分かっているとのことです。

太っていても運動している人、多動な人は元気で長生き 

ともあれ、糖尿病対策の運動については意識的に行う必要があります。糖尿病というと、これまでは肥満との関係、つまり「食」内容との関連ばかりに目が向けられてきました。例えば、20歳の時の体重より5キロ増えると糖尿病の発症リスクが2.5倍になります。ところが近年、太っていても運動している人、あるいは多動な人は元気で長生きしていることが疫学的に明らかになってきています。

アメリカで14,000人の健康な成人をランダムに抽出し、体重、BMI、運動量、体力を数値化した調査では、6年後に同じ14,000人に同様の試験をしたところ、体重の変化がまったくなかった人でも体力が低下している人は死亡率が高く、体重が増えていても運動量が高く体力が減少していない人は死亡率が高くならないことが分かりました。

「運動は薬である」という認識が必要 

上記のようなデータがあるにも関わらず、残念なことに、運動療法や運動指導は40%程度しか実施されていません。その最大の原因として、糖尿病患者が「運動が嫌い」「時間がない」などの傾向があるということが挙げられます。

「運動は薬である」ということがきちんと認識できると運動実施率は高くなります。薬を増やすことより2,000歩の歩行運動を行うことのほうが大きな健康効果が得られることを医師が訴え続けることで、糖尿病患者の運動実施率はまだまだ高められると田村氏は述べています。