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長寿のための運動習慣

世の中にはさまざまな健康情報が溢れています。健康法も人それぞれですが、共通して言えることは健康に適度な運動は欠かせないということです。今回は長寿と運動との関わりについてご紹介いたします。 

健康情報に翻弄される人々 

2013年12月15日(日)、東京海洋大学で、一般社団法人日本臨床栄養協会主催の「第二回市民公開講座」が開催されました。この中で、久保明氏(東海大学医学部抗加齢ドック教授)が「高齢者のいきいき生活のために~医師からのメッセージ」と題して講演しました。 

久保氏の外来に82歳の方がひどく疲れた顔をしてやってきました。話を聞くと、睡眠時間が4時間半しか取れず、疲れているとのことでした。睡眠時間が短い理由を患者に尋ねたところ、「人は3時間睡眠で十分という本を読んで、それを実践しているから」と答えたそうです。世の中には健康情報が溢れていて、それをそのまま実践している人が少なくありません。久保氏は適切な睡眠時間は人それぞれ違うことや睡眠の重要性をこの患者さんに伝えたということです。

高齢者は血圧と脈拍の測定を 

健康情報や健康法は一人ひとりがよく吟味して取り入れる必要があります。特に高齢者の場合は、以下のことを実践、あるいは継続することが望ましいと久保氏は述べています。1つ目は血圧と脈拍の測定です。その際、脈は手首か頸動脈のどちらかで取り、呼吸はゆっくりすることを意識します。そうすると、ほんのわずかですが吐く息の時に脈が遅くなります。それを指先と脳で感じ取ることができるかどうかが重要で、そのことによって、不整脈を発見することに繋がるだけでなく、脳や指先で繊細に物事を感じ取る力を認識することにも役立ちます。血圧は測る度に低下するため、2回計測して平均をとる必要があります。適切な血圧の維持はさまざまな疾病、特に生活習慣病のリスクの低減に役立ちます。

筋力強化、毎日の歩行スピードと歩幅を低下させないように 

2つ目が筋肉の強化です。高齢者の場合、転倒による事故が多くみられますが、それらは筋力の低下によるものがほとんどです。80歳であっても筋力が低下していなければ、転倒のリスクを減らすことができます。筋力をつける方法としては、ロコモティブシンドロームの予防運動としても知られる片脚立ちのフラミンゴ運動やハーフスクワットなどが挙げられます。また、毎日の歩行スピードと歩幅を低下させないようにチェックすることも大切です。目安となる歩行スピードは1秒で1メートル、歩幅については2歩で自分の身長よりも少し長いくらいの距離が進めることが目安です。近年、歩行スピードが1秒に1メートル以下になると死亡リスクが上昇するという研究報告も出ています。このスピードと歩幅のチェックは、必要な筋肉が維持できているかどうかを確認する目安の一つになります。

80年間の疫学調査結果、長寿に一番影響を与えていたのが「運動習慣」 

3つ目が適度な運動習慣を持つことです。健康長寿を実現するための研究が進められていますが、誰にでも確実に効果があるという方法はまだ見つかっていません。講演では、参考になるデータとして、1920年代からの80年間におよぶ疫学調査の結果が提示されました。この調査では1920年代に子どもだった1500人を対象に80年間もの間、性格・環境・結婚生活・社会生活・仕事状況・食生活を含む生活習慣など、あらゆる項目から一体何が長寿に影響を与えたかを調べました。その結果、長寿に一番影響を与えたのが「運動習慣」であることが分かりました。特に成人期になってから運動習慣を持った人は健康で長生きの傾向が強いことが分かりました。

この研究は米国で行われたもので、日本人にそのまま当てはまるわけではありませんが、運動が私たちの健康にいかに重要な要素であるかを示していることは間違いないと考えられます。日本人を対象にしたデータでは、65歳以上85歳未満の人々においても運動を週に3~4日している人はしていない人に比べて死亡率が低いことが分かっています。

日本は世界でも長寿の国ですが、寿命の長さだけでなく質が問われるようになってきています。いつまでも健康でイキイキ長寿を目指したいものです。