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脳を使うと眠りが深まる

ここ数年、日本人の睡眠障害についての報道が増えています。人は誰しも、中高年期にさしかかると「眠れない」という問題を抱えやすくなります。今回は、加齢と睡眠のメカニズムの関係についてご紹介いたします。

加齢とともに睡眠が浅くなる 

平安時代の巻物には「肥満」や「便秘」に加え、「不眠」についての描写があります。古くから不眠に悩まされる人たちは少なからずいたようです。

2013年9月8日、ベルサール九段で、市民公開講座「秋のすいみんの日」が開催され、三島和夫氏(国立精神・神経医療研究センター)が「健康な高齢者の睡眠の特徴」と題して講演しました。睡眠中は、翌日の活動のため、疲労回復、免疫強化、ホルモン調整、臓器の修復といった作業が行われます。若い頃は誰でも長い睡眠をとることができますが、年齢を重ねるとともに、睡眠障害を訴える人々が増える傾向にあります。しかし、そもそも眠りというものは加齢とともに浅くなるものであるということです。

「脳の休息」を促すノンレム睡眠 

睡眠の特徴は、最初の3時間は非常に深く、その後は、およそ90分置きに「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」を繰り返します。「レム睡眠」時は脳が活発に働き、夢を見ます。体は軽い寝返りをうちますが、基本的にぐっすり休んでいて、脳は記憶の定着や経験した出来事の整理などを行います。「レム睡眠」は体の休息を促しますが、一方、「ノンレム睡眠」は脳の休息を促します。コンピューターは使うほどに熱を帯びるため、熱を放出したり、電源を切って休める必要がありますが、コンピューターと脳はよく似ていて、人は「ノンレム睡眠」時に「レム睡眠」時で働いていた脳を休めようとします。こうした、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」がしっかりセットになった睡眠こそが「質の高い眠り」と考えられています。 

人の体温は寝る直前から下がり始める 

ところで、睡眠は体温と密接に関係しています。人の体温は寝る直前から低くなり、睡眠中もどんどん下がっていき、起床2時間前くらいから再び上昇します。この「体温の変化」は「脳の温度の変化」とも言い換えることができます。

寝る数時間前から脳の機能は低下し、同時に体温も下がりますが、体温の下り方が急であればあるほど寝付きが良くなります。寝る直前の入浴が推奨されるのは、体温(脳の温度)が一時的に上がりますが、物理的に急に上げた体温は、急速に下がるためです。

日中、脳を使うほど眠りも深くなる 

高齢者は若者と比べ眠りが深くありませんが、それは外部からの刺激を受ける機会が減ることと関係があります。外部からの刺激というのは、勉強や仕事だけでなく、物事や出来事に感動したり、人とコミュニケーションをとるといったことも含みます。それによって脳を活発に使うと、より眠りも深くなると考えられています。加齢とともに睡眠時間が短くなってきた、ぐっすり眠れない、夜中何度も目が覚めるといったことがあれば、まずは日中どのような生活をしているか見直す必要があります。周りの人と積極的にコミュニケーションをとったり、テレビからの情報もただ受け身になるだけではなく、感動したり自分自身でしっかり考えたりすることが大切です。

浅い眠り、必ずしも病気ではない 

また、睡眠は体内時計の役割を果たすメラトニンというホルモンも密接に関係しています。このホルモンが夕方以降、体内で増加することで体は「夜の始まり」を認識し、体の細胞のすべてが睡眠に向かって準備を始めます。日中に太陽光などの強い光をしっかり浴びれば、年齢を重ねてもメラトニンは若い頃と同レベルで分泌されることが近年明らかになっています。 

高齢者は若い人と違い、頻繁に目が覚める、睡眠時間が短くなる、熟睡感が減るという問題を抱えがちですが、それは眠りを維持するための力(脳の温度差、ホルモンの分泌量)が落ちてくることと関連しています。しかしこうした変化はほとんどすべての人に起こるため、必ずしも病気だと心配する必要はないようです。  

多くの人が25歳頃を境に運動をする機会が減りますが、40代頃でその傾向が顕著になります。また、60代で退職してからはさらに運動する機会や外部から刺激を受ける機会が減り、75歳をすぎると外出する時間が少なくなる傾向にあります。 睡眠時間が低下し始めた時は、日中に太陽光を浴びたり、積極的に外出するなど、生活の質が低下していないか、まず生活習慣を見直すことが必要と考えられます。