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健康と口腔の密接な関係

加齢がもたらす深刻な悩みの一つに歯の衰えがあります。歯が欠け、「咀嚼機能」が低下するようになると疾患リスクが高まるともいわれています。今回は、口腔ケアの重要性についてご紹介いたします。

加齢とともに高まる食事への関心、一方で低下する咀嚼機能 

人は誰しも齢を重ねるにつれ、「食べること」が最大の関心事になるといわれます。高齢者に「関心事は何か」とアンケートをとると、1位が「食事」となります。これは要介護者も同様で、家族との語らいやテレビ鑑賞よりも、「食事」に関心があると答える人が多いといいます。しかしながら、その一方で低下していくのが「咀嚼機能」です。咀嚼が十分できなくなり、「食べること」への満足感が得られなくなると、老年期のQOL(生活の質)も低下していきます。

2013年9月4日に女性就業支援センターで、「働き世代から始める、健康寿命を延ばす口腔ケア」と題して、松下健二氏(独立行政法人国立長寿医療研究センター 口腔疾患研究部部長)が「咀嚼機能」の重要性について講演しました。 

人の一生は、胎児期、幼児期、青年期、中年期、老年期、衰退期に大別されます。その中で最も長いのが老年期で、平均すると30年もあります。老年期はさまざまな病気にかかりやすく、病気をきっかけに一気に衰退期へと向かい、要介護や認知症状態になりがちです。衰退期は平均5年未満ですが、これを極力短くして老年期を健康で楽しく暮らせるようにすること、医療費を削減することが日本の超高齢化社会の課題であると松下氏はいいます。

歯が多いと、疾患リスクが低く長生き 

2013年現在、日本人男性の平均寿命は79.59歳で、女性は85.35歳です。2055年には男性が83.67歳、女性が90.34歳まで伸びるものと推測されています。しかしながら「健康寿命(介護を必要としないで自立して生活できる期間)」は平均寿命よりおよそ10年短いため、厚生労働省では健康寿命を1.6歳延ばすことを当面の目標として、さまざまな取り組みを行っています。この健康寿命ですが、実は口腔の状態と密接に関係していることが近年明らかになりつつあります。自身の歯がたくさん残っていると疾患リスクが低く、長生きできるというデータが複数の国で報告されていると松下氏はいいます。

日本人の成人のおよそ80%が歯周病に罹患 

実際に、健康寿命と口腔ケアはどのように関連しているのでしょうか。世界各国の疫学研究で、歯を1本失うと死亡率が1.01%上がり、ガンでさえも歯の少ない人のほうが罹患率が高いという報告があると松下氏はいいます。

ところで、自身の歯を守るためには虫歯予防が大切ですが、近年は歯を抜く主な原因が虫歯よりも「歯周病」にあるといわれています。実は、虫歯による抜歯は32%ですが、歯周病による抜歯は42%と虫歯を上回っています。歯周病は気づかないうちに進行していく生活習慣病の一種で、日本人の成人のおよそ80%が罹患しているといわれます。

40歳頃から歯周病の症状が出始める 

歯周病は、口腔内で細菌が感染していく細菌感染症(バイオフィルム感染症)で、症状としては歯肉腫張、歯肉出血、歯肉退縮、歯槽骨吸収、歯の移動、口臭などがあります。歯周病は口腔内を不潔にしていることが一番の原因となります。また、加齢やストレスでも口腔内に細菌が増えやすく、歯周組織の血管の老化から歯周病に罹りやすくなります。そのため40歳頃から歯周病の症状が出始めるケースが多いといわれます。

1日3~4回の歯磨きを心がける 

では、歯周病対策はどのようにすればいいのでしょうか。まずは丁寧な歯磨きを心がけることが大切です。食後丁寧に歯磨きをしないと、歯茎や歯に歯垢(プラーク)が残ります。これが細菌の塊となり歯周病を誘発します。歯磨き前の唾液を採取すると、細菌が約100万個/ml検出されますが、10分歯磨きをすると10万個/mlまで減らすことができます。

10分といえばかなり丁寧な歯磨きですが、それでもまだ細菌は残っています。そのため、できれば1日3~4回、毎食後に歯磨きをし、常に口腔内を清潔に保つことが大切と松下氏はいいます。

若い頃からの口腔ケアは老年期のQOL向上や健康寿命の延長に繋がるため、極めて重要です。